ぶり)” の例文
汽車中きしゃちゅう伊達だて大木戸おおきどあたりは、真夜中のどしゃぶりで、この様子では、思立おもいたった光堂ひかりどうの見物がどうなるだろうと、心細いまできづかわれた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かえって人通りのない処がよいというので、是から本郷山を抜け、塚前村へ掛りました時分は、もう日が暮れかゝり、又吹掛ふっかぶりに雨がざア/\と降って来ましたから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから五六日経つと、大雷おほかみなりが鳴つて雨がどしやぶりに降り出した。
夏の夜のどしやぶりの雨
そぞろごと (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
前夜まで——唯今ただいまのような、じとじとぶりの雨だったのが、花の開くようにあがった、彼岸前の日曜の朝、宗吉は朝飯前あさはんまえ……というが、やがて、十時。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうぶりで、車軸を流す様で、菊屋橋のきわまで来て蕎麦屋で雨止あまやみをしておりましたが、更に気色けしきがございませんから、仕方がなしに其の頃だから駕籠を一挺いっちょう雇い、四ツ手駕籠に桐油とうゆをかけて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
折からのざんざぶりで、一人旅の山道に、雨宿りをする蔭もない。……ただ松の下で、行李こうりを解いて、雨合羽あまがっぱ引絡ひきまとううちも、そでを絞ったというのですが。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それきりですが、続けて、二年、三年、五年、ざっと七年目に当ります、一昨年のおなじ菊の日——三度に二度、あの供養は、しぐれ時で、よく降ります。当日は、びしょびしょぶり
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おかしな思出はそれぐらいで、白河近くなるにつれて、東京から来がけには、同じ処でがふけて、やっぱりざんざぶりだった、雨の停車場ステエションの出はずれに、薄ぼやけた、うどんの行燈あんどう
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牡丹に立った白鷺になるよりも、人間は娑婆しゃばが恋しかんべいに、産で死んで、姑獲鳥うぶめになるわ。びしょびしょぶり闇暗くらやみに、若い女が青ざめて、腰の下さ血だらけで、あのこわれ屋の軒の上へ。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの用心池の水溜みずたまりの所を通ると、掃溜はきだめの前に、円い笠を着た黒いものが蹲踞しゃがんでいたがね、俺を見ると、ぬうと立って、すぽんすぽんと歩行あるき出して、雲の底に月のある、どしゃぶりの中でな、時々
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たれ一人ひとりよこるなんど場席ばせきはない。花枕はなまくら草枕くさまくら旅枕たびまくら皮枕かはまくらたてよこに、硝子窓がらすまど押着おしつけたかたたるや、浮嚢うきぶくろ取外とりはづした柄杓ひしやくたぬもののごとく、をりからそとのどしやぶりに、宛然さながら人間にんげん海月くらげる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)