追剥おひはぎ)” の例文
張旅人の懷中くわいちう胴亂どうらんに目を掛けて追剥おひはぎ強盜がうたうを爲んとするいのちらずめ己をたれとか思ふ東海道五十三次おとに聞えて隱れのない題目講だいもくかう講頭かうかしら水田屋藤八を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鳥右ヱ門は、坊主と乞食こじきだけはして見る気がありませんでした。ああいふものになるよりは、追剥おひはぎになつた方がましだ、などと考へてをりました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「私は養仙寺前の竹原屋まで用事を頼まれて參りましたが、あんまり遲くなつて、泊めて頂きました。此節は辻斬や追剥おひはぎが出て、此邊は物騷でございます」
すぐ風呂敷ふろしきの結び目がずつとけてしまつて、うしろへ荷物をはふり出し、すぐ匕首あひくちいて追剥おひはぎたゝかふくらゐでなければ、とて薬屋くすりや出来できませぬ、わたしけば大丈夫でございます
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
農夫ひやくしやうといふものは、どんな時にでも、どんな所へでもよく通りかゝるもので、基督がお説教をしたがつてる時にも、追剥おひはぎが物を欲しがつてる所にも農夫ひやくしやうがそこへ通り合はせる。
もつともいとけなしといへども、のちおのづから設得まうけえんと。はたせるかなひととなりて荊州けいしう刺史ししとなるや、ひそか海船かいせんあやつり、うみ商賈しやうこ財寶ざいはう追剥おひはぎして、とみいたすことさんなし。のち衞尉ゑいゐはいす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あの三つの人物の中では、私は最後のあなたが好きなのでございますよ。あゝあなたがもう五六年も前に生れてゐらしたのだつたら、さぞ立派な紳士追剥おひはぎにおなりだつたでせうに!」
追剥おひはぎを弟子に剃りけり秋の旅
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「我がかげの我をおひけりふゆつき」と人之をうたがふ時はやなぎかゝ紙鳶たこ幽靈いうれいかとおもひ石地藏いしぢざう追剥おひはぎかとおどろくがごとし然ば大橋文右衞門の女房お政はをつとの身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「驚いたね、親分。お舟でなくお袖でなく、勘三郎でなきや、——流しの追剥おひはぎか、氣違ひぢやありませんか」
山の中は歩きつけてります、またわたしは力がありますから、途中とちう追剥おひはぎが五人や六人出ても大丈夫でございます、富山とやま薬屋くすりや風呂敷ふろしきを前で本当ほんたうに結んではりませぬ、追剥おひはぎにでもふと
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
追剥おひはぎのやうだな。」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夜鷹と追剥おひはぎと辻斬を名物にした柳原は、遠い町家に五日月が落ちて、地獄の底を行くやうな無氣味さです。
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
首尾よく欺むき文藏方にて金千百八十兩ぬすみ取しかば仁左衞門は三吉小猿こざるに向ひ斯樣かやうに仕合よくゆき智嚢ちなう古の諸葛孔明しよかつこうめい我朝の楠正成まさしげも及ぶまじとは云ふものゝ是まで夜盜よたう追剥おひはぎ人殺し等の數擧て算へ難し此上盜賊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この前に月見團子を飾つて遲くまでワイワイ騷いで寢たが、翌る朝起きて見ると、屏風がこの通り剥がされてあつたといふわけさ。屏風が追剥おひはぎに逢つたといふのは前代未聞だ
「いえ、これつきりぢや唯の追剥おひはぎで、一席辯ずる程のこともありませんが、後で死骸を調べて見ると、鐵の野郎の懷中に、小判で十兩といふ大金があつたんだから話の種でせう」
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
蒲原かんばらの酒屋に押込が入つて、賣溜を奪つて逃げ、七月二十八日は小夜さよの中山で追剥おひはぎが旅人を脅かし、九月十七日には飛んで鈴鹿峠すゞかたうげで大阪の町人夫妻が殺されて大金を取られ、十月七日は
「それぢや追剥おひはぎぢやないか。辻斬よりも尚ほ惡い」