足取あしどり)” の例文
その身動きに、いたちにおいぷんとさせて、ひょこひょこと足取あしどり蜘蛛くもの巣を渡るようで、大天窓おおあたま頸窪ぼんのくぼに、附木つけぎほどな腰板が、ちょこなんと見えたのを憶起おもいおこす。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さう思ひつくと、急に栄蔵は心が弾んで来て、足取あしどりも軽くなつて、新太郎ちやんの家へいつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
かつッと、金属製の靴が鳴ったかと思うと、すぐさま四列縦隊じゅうたいが出来、ついで、この縦隊はすッすッすッと、小きざみな足取あしどりで歩きだした。生きている兵士の二倍ぐらいの速さである。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
丁度てうど墓門ぼもんにでもいそぐ人のやうな足取あしどりで、トボ/\と其の淋しいあゆみつゞけて行ツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
顔のあたりに垂れているのであった、私はそれを見ると、突然何かに襲われた様に、慄然ぞっとして、五六けん大跨おおまた足取あしどりすこぶたしかに歩いたが、何か後方うしろから引付ひきつけられるような気がしたので
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
足取あしどりでおいでになる。お后様。あちらへおむき遊ばせ。
おぼつかなしや、足取あしどりも。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「ほい。」ととき、もう枯草かれくさだんりてる、くしやみんだ身輕みがる足取あしどり
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あれがつもりでは、自分が文句を言わない足取あしどり
その静かな足取あしどり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
與吉よきち仕事場しごとば小屋こやはひると、れいごとく、そのまゝ材木ざいもくまへひざまづいて、のこぎりけたとき配達夫はいたつふは、此處こゝまへ横切よこぎつて、なゝめに、なみられてながるゝやうな足取あしどりで、はしつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
角のある牛が分かれ分かれに、足取あしどりを用心して
与吉が仕事場の小屋に入ると、例の如く、ぐそのまま材木の前にひざまずいて、のこぎりに手をけた時、配達夫は、此処ここの前を横切って、身をななめに、波に揺られて流るるような足取あしどりで、走り去った。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
霜枯しもがれから引続き我慢をしているが、とかく気になるという足取あしどり
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三舎さんしやける足取あしどりで、たぢ/\と後退あとずさりして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)