赤錆あかさび)” の例文
すると、驚いたことには小刀が悉皆すっかり赤錆あかさびになっております。これを見た時、私は何ともいえない慚愧ざんき悔恨の念が胸にこみ上げて来ました。
侍女 ええ、じょうかぎは、がっちりささっておりましたけれど、赤錆あかさびに錆切りまして、しますと開きました。くされて落ちたのでございます。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕等はすすきの穂を出した中を「悠々荘」のうしろへまわって見た。そこにはもう赤錆あかさびのふいた亜鉛葺とたんぶき納屋なや一棟ひとむねあった。
悠々荘 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この島の神様赤水あかみず明神は姫神でした。この水をんで歯をお染めになろうとすると水の色が赤錆あかさび色であったので、また銕漿水おはぐろみずという名前もありました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
赤錆あかさびだらけの牡蠣殻かきがらだらけのボロ船が少しも恐ろしい事アないが、それでも逃がして浦塩ウラジオへ追い込めると士気に関係する。これで先ず一段落が着いた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
赤錆あかさびになったり刃の鈍くなったもので、ゴリゴリとごつく削っていたのでは、かつおぶしがたとえ百円のものでも、五十円の値打ちすらないものになる。
だしの取り方 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
一番下の凝混土コンクリートに接する処の奥の方から、半腐りになったメリヤスの襯衣シャツに包んだ、ボロボロの手袋と、靴下と、赤錆あかさびだらけの藁切庖丁が一梃出て来た。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
船籍、ブエノス・アイレスと白ぺいんとが赤錆あかさびで消えかかって、足の下の吃水線きっすいせんには、南あめりかからくっ附いて来た紫の海草が星と一しょに動いていた。
ところが古墳こふんれてあつたかたなつるぎるいになりますと、そのかず非常ひじようにたくさんありますが、中身なかみがみなてつですから赤錆あかさびになつて、ぼろ/\にくさつてしまひ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
島のなかほどのところに、岩の柱がいくつか背伸びをし、南画にあるからの山にそっくりであった。ときどき噴火があるのらしく、丸い峯の頂きに赤錆あかさびがついている。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
念のため、剣の奉納額のある社を、片っ端から歩きましたがどこのも無事で、——よしんば額から取り外したところで、赤錆あかさびに錆びて物の役に立ちそうもありません。
入口はその格子の一部分で、そこに鉄製の潜戸くぐりどがあって、それには赤錆あかさびのした大きな鉄の錠が、いかにもおごそかに、さもさも何か「重大事件」といったように重たく横たえられてある。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
屋根や垣がさっと転覆した勢をそのままとどめ、黒々とつづいているし、コンクリートの空洞くうどう赤錆あかさびの鉄筋がところどころ入乱れている。横川駅はわずかに乗り降りのホームを残しているだけであった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
うでもなまくら、刀も赤錆あかさび上着うわぎ一枚きれはしない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
品川沖の外國廢船の赤錆あかさび
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
侍女 えゝ、錠の鍵は、がつちりさゝつてりましたけれど、赤錆あかさび錆切さびきりまして、しますときました。くされて落ちたのでございます。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
赤錆あかさびになったり、刃の鈍くなったもので、ゴリゴリとごつく削っていたのでは、かつおぶしが例え一円のものでも、五十銭の値打ちもしないものになります。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
爪先上りの所々には、赤錆あかさびの線路も見えない程、落葉のたまつてゐる場所もあつた。その路をやつと登り切つたら、今度は高い崖の向うに、広々と薄ら寒い海が開けた。
トロツコ (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
杖立て清水をもって百姓の難儀を救うまではよいが、怒って井戸の水を赤錆あかさびにして行ったり、芋や果物を食べられぬようにしたというなどは、こういう人たちには似合わぬ仕業であります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すると又それに連れて図書館の外側の手入れが不充分になったらしく、スレート屋根の上にタンポポだのペンペン草だのがチラチラとえ始めた。緑色の鉄のブラインドには赤錆あかさびが吹き始めた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……別に鉄槌かなづち、うむ、赤錆あかさび、黒錆、青錆のくぎ、ぞろぞろと……青い蜘蛛くもあか守宮やもり、黒蜥蜴とかげの血を塗ったも知れぬ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爪先つまさき上りの所所ところどころには、赤錆あかさびの線路も見えない程、落葉のたまっている場所もあった。その路をやっと登り切ったら、今度は高いがけの向うに、広広と薄ら寒い海が開けた。
トロッコ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
渋色のたくましき手に、赤錆あかさびついた大出刃を不器用に引握ひんにぎって、裸体はだかおんな胴中どうなかを切放していぶしたような、赤肉と黒の皮と、ずたずたに、血筋をかがった中に、骨の薄く見える
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
江東橋かうとうばしを渡つた向うもやはりバラツクばかりである。僕は円タクの窓越しに赤錆あかさびをふいた亜鉛トタン屋根だのペンキ塗りの板目はめだのを見ながら、確か明治四十三年にあつた大水おほみづのことを思ひ出した。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)