豪家ごうか)” の例文
そのいわれを尋ねると、昔南粂郡みなみくめごおり東山村ひがしやまむらという処に、東山作左衞門ひがしやまさくざえもんと申す郷士ごうしがありました。すこぶ豪家ごうかでありますが、奉公人は余り沢山使いません。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
参宮帰りに海賊船に乗ったのは豊橋某町の山村と云う豪家ごうかの親子で、父親は嘉平かへいと云い忰は嘉市かいちと云っていた。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女乗物としてもこれはかなり贅沢なものじゃ——と万太郎は、それからおして、行く手の狛家こまけなるものも、定めし由緒ある豪家ごうかに違いあるまいと聯想しました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その間に青縞あおじまいちのたつ羽生はにゅうの町があった。田圃たんぼにはげんげが咲き、豪家ごうかの垣からは八重桜が散りこぼれた。赤い蹴出けだしを出した田舎いなかねえさんがおりおり通った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
のお葉という女は、どんな素性来歴の者か知らぬが、豪家ごうかの息子を丸め込んで、揚句あげくはてに手切れとか足切れとか居直るのは、彼等社会に珍しからぬためしである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
長者町の筆屋の店頭みせさきは、さすが町内第一の豪家ごうかの棟上げだけあって、往来も出来ないほど、一ぱいの人集ひとだかりだ。紅白こうはくの小さな鏡餅をく。小粒を紙にひねったのをまく。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
此処ここで聞いたはなしに、ある時その近在のさる豪家ごうかの娘が病気で、最早もう危篤という時に、そのの若者が、其処そこから十町ばかりもある遠野町へ薬を買いに行った、時はもう夜の九時頃のことで
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
新仏しんぼとけの○○村の豪家ごうか○○氏の娘の霊である、何かゆえのあって、今宵こよい娘の霊が来たのであろうから、お前だち後々のちのちめにひそかにこれを見ておけと告げて、彼等徒弟は、そっと一室ひとまに隠れさしておき
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
市内の豪家ごうか鉅商きょしょうの幾人かの一団に市政を頼むようになった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
春見は困り果てゝ居ります所へ入って来ましたのは、前橋竪町の御用達の清水助右衞門という豪家ごうかでございます。
勘作は小柄な男を待たして置いて、そのこいを持って鯉の注文を受けている豪家ごうかへ往って二ひきを売り、あとの二疋を宿の旅籠はたごへ売ってその金で酒を買って帰った。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ははは。そちは信長をめくらと思うているな。京では京の浮かれとあそびほうけ、近江路おうみじへ来ては、長浜のさる豪家ごうかまで、そっとゆうを呼んでおいて、ひそかに会って来たであろう」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘作は村の豪家ごうかから二尺位ある鯉を二疋揃えて獲ってくれるなら、云うとおりの値で買ってやると注文せられているので、二三日前からその鯉を獲ろうとしているが
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
宇陀うだ浅間山せんげんやま北條彦五郎ほうじょうひこごろうという泥坊が隠れていて、是は二十五人も手下の者が有るので、合力ごうりょくという名を附けて居廻いまわりの豪家ごうかや寺院へ強談ごうだんに歩き、沢山な金を奪い取るので
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
重々恐入った次第で何分にもおゆるしを願います、主家しゅか改易の後、心得違いを致して賊のかしらとなり、二百人からの同類を集めて豪家ごうか大寺おおでらへ押入り、数多あまたの金を奪い、あるい追剥おいはぎを致し
どこかこの辺にやしきがあるだろう、それとすれば、どこのむすめだろうか、と、彼はそのあたりに立派な邸を持った豪家ごうかを考えて見たが、彼の知っている限りでは、そう云うような家はなかった。
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)