いわ)” の例文
自分が業務を尽さなければ社会から不平をいわれても仕方がない。それを自分の方から社会にむかって不平を言うとは実に乱暴千万だね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
小歌をと思切って言うかいわぬに、はいと婢は畏まって楼下したへ降行き、小歌さんをと高く呼んで、そして低声こごえに気のつまる方と朋輩に囁いて居た。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
貴女が知らぬはずは有りますまい倉「はい」と漸くいわんとして泣声にむねふさがり暫し言葉も続かざりしが漸くに心を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
まあそんなにいわなくてもいいわ、今日はさいわい町の祭日だ、さあ目出度めでたい。お前も斯様そんなに達者で大きくなって来てくれた。今日はゆるりと一杯鯛の刺身で飲むべえ。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何時いつもならば文三にもと言うところを今日は八したゆえ、お鍋が不審に思い、「お二階へは」ト尋ねると、「ナニ茶がカッくらいたきゃア……いわないでもいいヨ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
未練がましい事をして、茂さアの出世を妨げると承知をしねエぞと、くれぐれもお父さアにいわれただよ
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ことに最後の夜の如きは、愚痴ッぽい事をいっ消失きえた、あまり不思議だから女房は翌日、牢番に次第を物語った、すると死刑になる囚人には、折々ある事だ願ってみろといわ
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
未落語家三遊亭圓朝氏が人情話にんじょうばなしの巧に世態を穿ち妙に人情を尽せるにしかず、其の人の感情を動す頗る優劣ありといわんとす、嗚呼あゝ圓朝氏をして欧米文明の国に生れしめば、其の意匠の優れたる
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
答うる声も震えながら、「何がなし一件じゃ、これなりこれなり。」と、握拳にぎりこぶしを鼻の上にぞかさねたる、乞食僧の人物や、これをいわむよりはたまた狂と言むより、もっとも魔たるに適するなり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其説明は先ず論理学の帰納法に従って仮定説から先にいわねば分らぬ、此闘いは支那人の家の高い二階ですぜ、一方が逃る所を背後うしろから二刀ふたかたな三刀追打に浴せ掛たが
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
商人の妻になったものが八百屋を呼捨にして横柄だと悪くいわれたり、軍人の妻になったものが魚屋さーんと丁寧に言って良人おっといましめられたり、色々な奇談がございますよ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
もしやの三字の外は言うにもいわれぬ果敢はかないことが頼みで、まず一散に柳橋まで乗り着けた。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
……突如として自分の前に立ちふさがったものは、顔色の青晒あおざめている女の姿! ぎょっとして見上げると頭髪かみのけは顔に乱れていて、物もいわんで、自分を捕えたままひややかにけらけらと笑い
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
心ならずもあきないをしまい夕方帰かえって留守中の容子ようすを聞くと、いつつくように泣児なくこが、一日一回もなかぬといわれ、不審ながらもよろこんで、それからもその通りにして毎日、あきないに出向でむくなにとても
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
よしや居るにしても居るとはいわぬよ、事に由れば余温ほとぼりさめるまで当分博賭ばくちやめるかも知れぬ何うして其様な未熟な事でいける者か、差当り其家へは行かずにほかの所で探偵するのが探偵のいろはだよ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
公園の薄茶一碗突合わずに居た目賀田貞之進が、愚直と斥けられた今に及んで、たとい自分が芸妓を呼たいためといわないまでも、聞くさえが畢生ひっせいの恥辱のように思われ、どうしたらいいかということが
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)