ぐる)” の例文
十月十四の午後の出来事をづ書くべきにさふらはん。その前夜ぜんや私常よりも一層眠りぐるしく、ほとほとと一睡の夢も結びかねて明かせしにさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
読み返しくに、はづかしきことのみ多き心の跡なれば、あきらかにやはらぎたるあら御光みひかりもとには、ひときはだしぐるしき心地ぞする。晶子
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
代助は両手をひたひてゝ、たかそらを面白さうにつてまはつばめの運動を椽側から眺めてゐたが、やがて、それがぐるしくなつたので、へやなか這入はいつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
追駈て走りづめにて來給きさたまひしとなれさだめてお草臥の事ならん今よりいづれを尋ね給ふ共夜中にては知申まじ見ぐるしさを厭ひ給はずば今宵は此所にて夜を明し明なば早く此村の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
愛鷹の麓へ落ちた線の交叉するところ、それに正面して、箱根火山の外廓が、ぐるしいまでの内部の小刻みを大まかに包んで、八の字状に斉整した端線を投げ掛けたところは、正に
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
おききぐるしいてんるべく発表はっぴょうなさらぬようくれぐれもおたのみしてきます……。
「今の病人の見ぐるしいのを覧に成りましたか」とドリヷルの細君が問ふと、ムネ・シユリイは「いや蔭で見なかつた。自分はそんなきたない物は大嫌ひだ。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
いよいよこれから、こちらの世界せかいのおはなしになりますが、最初さいしょはまだ半分はんぶんあし現世げんせにかけているようなもので、矢張やは娑婆しゃばくさい、おききぐるしい事実ことばかり申上もうしあげることになりそうでございます。
吐き自然惣身戰慄ふるへ出しは見ぐるしかりし體裁ありさまなり大岡殿には又黒崎又左衞門市田武助の兩人に對はれ其の方どもは理左衞門が下役として九助の所刑方萬事申だんじたる趣き倶々とも/″\不吟味なるぞと言るゝに又左衞門其の儀は私くし事毎度同役武助と申合せ種々異見いけんも仕まつり役儀と申ながら餘り手づよくばかり致しては
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日本の七八月と思ふ程変調に暑い日の午後、だらだらざかに成つて居る赤土の焼けたその村のみちは、アカシヤの若葉の並木が続いて居るにかゝはらず歩きぐるしかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)