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苦味
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にがみ
ふりがな文庫
“
苦味
(
にがみ
)” の例文
寒月君は
苦味
(
にがみ
)
ばしった好男子で、活動小切手と迷亭から称せられたる、金田富子嬢を優に吸収するに足るほどな念入れの製作物である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
目ばかりいたずらに血走らして、むなしい明け方にガッカリした疲れを見合う、十手商売の
苦味
(
にがみ
)
を今朝も
舐
(
な
)
めねばなりますまい。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その情人といふのは此の宿の料理人で、
年齡
(
とし
)
はおりかよりも二つ三つ若い、
苦味
(
にがみ
)
走つたいゝ男だといふのであつた。それも勿論暇を出された。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
罎
(
びん
)
の
底
(
そこ
)
になつた
醤油
(
しやうゆ
)
は一
番
(
ばん
)
の
醤油粕
(
しやうゆかす
)
で
造
(
つく
)
り
込
(
こ
)
んだ
安物
(
やすもの
)
で、
鹽
(
しほ
)
の
辛
(
から
)
い
味
(
あぢ
)
が
舌
(
した
)
を
刺戟
(
しげき
)
するばかりでなく、
苦味
(
にがみ
)
さへ
加
(
くは
)
はつて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
説教者の力により胸は
戰
(
をのゝ
)
き心は壓倒されたが、
柔
(
やは
)
らげられることはなかつた。終始其處には一種異樣な
苦味
(
にがみ
)
が漂つてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
▼ もっと見る
母たる者の子に
嚴
(
いかめ
)
しとみゆる如く彼我にいかめしとみゆ、きびしき
憐憫
(
あはれみ
)
の
味
(
あぢ
)
は
苦味
(
にがみ
)
を帶ぶるものなればなり 七九—八一
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
君が前年出した詩集の
伊太利
(
イタリイ
)
に遊んだ時の諸作に比べると近頃の詩は
苦味
(
にがみ
)
が加はつて来た。
其丈
(
それだけ
)
世間の圧迫を君が感ずる様に成つたのだらうと僕は云つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その日の正太は元気で、夏羽織なぞも新しい
瀟洒
(
さっぱり
)
としたものを着ていた。「今にウンと一つ働いて見せるぞ」と彼の男らしい、どこか
苦味
(
にがみ
)
を帯びた眼付が言った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
苦味
(
にがみ
)
ばしった立派な顔が、綺麗になる。僕なんぞの顔は拭いても拭き
栄
(
ばえ
)
がしないから、お上も構わない。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
小さな
茶碗
(
ちゃわん
)
に、
苦味
(
にがみ
)
の勝った
強
(
きつ
)
い珈琲をドロドロに淹れて、それが昨日から何にも入っていない胃の
腑
(
ふ
)
へ
沁
(
し
)
み込んで、こんな
旨
(
うま
)
い珈琲は、口にしたこともありません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
虎杖
(
いたどり
)
の生長したのは食ふべくも無いものだが、其の嫩莖を貪り囓めば、爽快を感ぜしめる。蕗の薹は其の
苦味
(
にがみ
)
を以ての故か知らぬが、慥に多少の藥餌的效能を有する。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「投げつけられると、菌がびっくりして、その拍子に
苦味
(
にがみ
)
が幾らか取れるようですから。」
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
これは中国にも産し、
巻丹
(
けんたん
)
の名がある。それは
花蓋片
(
かがいへん
)
が
反巻
(
はんかん
)
し、
且
(
か
)
つ
丹
(
あか
)
いからである。このオニユリの球根、すなわち
鱗茎
(
りんけい
)
は白色で食用になるのであるが、少しく
苦味
(
にがみ
)
がある。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
大槻
(
おおつき
)
の
倅
(
せがれ
)
なども内々見舞に来て、官軍と賊軍と塾の中で混り
合
(
あっ
)
て、朝敵藩の病人を看病して居ながら、何も
風波
(
ふうは
)
もなければ
苦味
(
にがみ
)
もない。ソンナ事が塾の安全であった
訳
(
わ
)
けでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
色の浅ぐろい、
苦味
(
にがみ
)
の走ったキリリとした顔の持ち主——
大蘆原
(
おおあしはら
)
軍医だった。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
浪子が死せしと聞きしその時は、未亡人もさすがによき
心地
(
ここち
)
はせざりしが、そのたまたま贈りし生花の一も二もなく突き返されしにて、
万
(
よろず
)
の感情はさらりと消えて、ただ
苦味
(
にがみ
)
のみ残りしなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
一葉女史の味わった人世の
苦味
(
にがみ
)
、
諦
(
あきら
)
めと、
負
(
まけ
)
じ魂との試練を経た哲学——
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
横から見るとすこし猫背だ。両手をきちんと袴のまちへ納めて、すウッすッと
擦
(
す
)
り足である。見ようによっては、恐ろしく
苦味
(
にがみ
)
走って見える横顔に、元日の
薄陽
(
うすび
)
がちらちらと影を踊らせている。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
底ひも知らぬ
深海
(
ふかうみ
)
の潮の
苦味
(
にがみ
)
も世といづれ。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
愉快な事実があって、この愉快な事実を紙に写しかえたのだから、
苦味
(
にがみ
)
はないはずだ。ニーチェの時代はそうは行かないよ。英雄なんか一人も出やしない。出たって誰も英雄と立てやしない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
苦味
(
にがみ
)
を口いッぱい頬ばったような面持をたたえていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
底ひも知らぬ
深海
(
ふかうみ
)
の潮の
苦味
(
にがみ
)
も世といづれ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
それだけに、あとの
苦味
(
にがみ
)
はいつまでも消えまい。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“苦味”の意味
《名詞》
苦 味(くみ・にがみ)
苦い味、またはその程度。
不愉快な気持ち。また、その様子。
男の顔の引き締まっている様。
(出典:Wiktionary)
“苦味”の解説
苦味(にがみ)は五基本味の一つの味覚である。苦み(にがみ)。
(出典:Wikipedia)
苦
常用漢字
小3
部首:⾋
8画
味
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“苦味”で始まる語句
苦味走
苦味丁幾
苦味酒