花環はなわ)” の例文
わづかに六畳と二畳とに過ぎない部屋は三面の鏡、二脚の椅子、芝居の衣裳、かつら、小道具、それから青れた沢山たくさん花環はなわとでうづまつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それであいちやんは、なぐさみに雛菊ひなぎく花環はなわつくつてやうとしましたが、面倒めんだうおもひをしてそれをさがしたりんだりして勘定かんぢやうふだらうかと
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ほうきは、砂穴からみどり色をしたオランダぜりをみつけてきて、それをスープ入のうえに、花環はなわのようにかけてやりました。
そばにはしろきれせた讀經臺どきやうだいかれ、一ぱうには大主教だいしゆけうがくけてある、またスウャトコルスキイ修道院しうだうゐんがくと、れた花環はなわとがけてある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
むしろそれは、民衆が捧げた花環はなわや背光であって、釈迦しゃかも人間、弘法も人間と考えてさしつかえないものと思っている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然し村内に不幸があった場合には、必庭園の花を折って弔儀ちょうぎに行く。少し念を入れる場合には、花環はなわなどをこさえて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「いいえ、たいしたことはございませんの。それよりも奥様、りっぱなお花環はなわをいただきましておそれ入りました」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かんの上を見ると、いつの間にか綺麗きれい花環はなわせてあった。「いつ来たの」とそばにいる妹の百代ももよに聞いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男女の帽子に交じって花環はなわが山のように積まれ、他のテーブルには、大皿と小皿や杯やびんなどが楽しげに並べられて、そのまわりに四組みの男女はすわっていた。
かれは飛び飛びにそれを見たが、ところどころの甘い蜜のような言葉はかれの淋しい孤独の眼の前にさながらさまざまの色彩でできた花環はなわのようにちらついて見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
然し先程、薔薇と鈴振花と茉莉花まつりくわの香と仰有おつしやいましたでは御座いませんか、ひとつ品の良い香のする奇麗な花環はなわをおつくり申しませう、庚申薔薇かうしんばら葉鷄頭はげいとうでもあしらひまして。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
清盛入道の首は沈んで、もうそこへは可愛い女の子が、花環はなわのやうな赤い浮袋ブイに乗つて流れてきます。黒いふんどしの子供たちは、水から顔を出して見てびつくりします。
プールと犬 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
わたくしはまた紙でつくった花環はなわに銀紙の糸を下げたり、張子はりこの鳩をとまらせたりしているのを見るごとに、わたくしは死んでもあんな無細工ぶさいくなものは欲しくないと思っている。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だが、そこは、單に、非常に美しい客間だつた。その中に小さな婦人室もあつて、どちらにもまつ白な絨毯が敷かれ、その上には素晴らしく華麗な花環はなわが置いてあるやうに見えた。
その白い花を摘んでは、それで花環はなわをつくりながら。飛球があがる。私は一所懸命に走る。たまがグロオブにさわる。足がすべる。私の体がもんどり打って、原っぱから、田圃たんぼの中へ墜落する。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
妹の演奏が終ると、美しい花環はなわが、幾つも幾つも、壇上へ運ばれた。露西亜の少女は、それを一々あふれるような感謝で受取ると、子供のようによろこびながら、ピアノの上へ幾つも/\置き並べた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しをれし花環はなわ投げずとも
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
その一部に※クトリヤ女皇ぢよくわうと先帝との戴冠式に用ひられた宝冠や、宝石と貴金属で華麗を尽した沢山たくさん花環はなわやが陳列されてゐる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そばにはしろきれせた読経台どきょうだいかれ、一ぽうには大主教だいしゅきょうがくけてある、またスウャトコルスキイ修道院しゅうどういんがくと、れた花環はなわとがけてある。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
十二畳二間ふたまを打ぬいて、正面の床に遺髪と骨を納めた箱を安置し、昨日から来て葛城の姉さんが亡き義妹の為に作った花環はなわをかざり、また藤なぞ生けてあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこで、べったりすわって、草をぬいてやったり、よろけている十字をまっすぐにしてやったり、風でふきとんでいる花環はなわをもとのお墓の所へおいてやったりしました。
その家は公園から田原町たわらまちの方へ抜ける狭い横町であったがためだという話である。観客から贔屓ひいきの芸人に贈る薬玉くすだま花環はなわをつくる造花師が入谷いりやに住んでいた。この人も三月九日の夜に死んだ。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
せめて花環はなわの中ならば
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
花環はなわ花籠はなかご
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
故人の大理石像の前に「シエキスピアの家より」としてユウゴオの今年の誕生日に英国から贈つて来た花環はなわが青れたまゝ捧げられて居た。文豪の旧宅がたがひに贈答をする習慣も奥ゆかしい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)