縱令たとひ)” の例文
新字:縦令
勿論もちろんあま正直しやうぢきにはつとめなかつたが、年金ねんきんなどふものは、縱令たとひ正直しやうぢきらうが、からうが、すべつとめたものけべきでる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
どうか斯う云ふ貴重品は鄭重ていちように扱つて、縱令たとひそれに改正を加へると云ふにしても、徐々に致したいやうに思ふのであります。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
二 賢人百官を總べ、政權一途に歸し、一かくの國體定制無ければ、縱令たとひ人材を登用し、言路を開き、衆説を容るゝ共、取捨方向無く、事業雜駁にして成功有べからず。
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
縱令たとひ化物ばけものても、それ理性的りせいてき乾燥無味かんさうむみなものであつて、情的ぜうてき餘韻よいんふくんでない。したがつてすこしも面白味おもしろみい。ゆゑ文運ぶんうん發達はつたつしてると、自然しぜん化物ばけものくなつてる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
縱令たとひ忘られざらんも、その偶〻たま/\存ずるは汝が囹圄れいご桎梏しつこくとして存じ、汝が性命の杯中に落ちたる毒藥として存ずるならんといふ。われはタツソオの上をおもへり。矜持きようぢせるレオノオレよ。
さへてりとくにむすめためにもためにも行末ゆくすゑわろき縁組えんぐみならずとより/\の相談さうだんれきくはらだゝしさ縱令たとひ身分みぶんむかしとほりならずとも現在げんざいゆるせし良人をつとあるいまはしき嫁入よめいり沙汰ざたきくもいやなりおもてにかざる仁者顏じんしやがほ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
縱令たとひその着眼點殊なりとても、衆理想皆是なり、皆非なりといはむこと、尋常の論理の許すところにはあらざるべし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
縱令たとひしんじなくとも、祈祷きたうをすると、なんともはれんくらゐこゝろやすまる、きみ接吻せつぷん爲給したまへ。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
われ縱令たとひ逍遙子が言に從ひて、攻めずして防がむとすといへども、防禦のために放つ矢石の敵をきずつけること、攻戰のために放てるものに殊ならざるべし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
縱令たとひ我々われ/\意見いけんくらゐちがつても、こゝ我々われ/\の一するところがあるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
縱令たとひ中頃定家假名遣が出まして、一頓挫を來しましても少し荊棘が生えましても、荊棘を刈除いて、との道を擴げて、國民が皆歩むやうな道にすると云ふことが
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
その宣告、その評論は縱令たとひ絶對の上よりしても實相を撥無はつむすべからず。盜む者と盜まるゝ者と、みな是なり、皆非なりといひてはおそらくは裁判にはなるべからず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
縱令たとひ學校だけでどう教へても誤まるのであります。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)