素晴すばら)” の例文
うらやましい、素晴すばらしく幸福そうな眺めだった。涼しそうな緑の衝立の蔭。確かに清冽せいれつで豊かな水。なんとなく魅せられた感じであった。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ブンと風をきり、五十メエトルも海にむかって、突き刺さって行く槍の穂先ほさきが、波にちるとき、キラキラッと陽にくるめくのが、素晴すばらしい。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
たしかに、これは大抵たいてい子供こども菓子くわしべるときおこることだが、あいちやんはなに素晴すばらしいことがおこるのをばかりのぞんでて、通常あたりまへみちすゝんでくのは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あるひ其頃そのころ威勢めをひ素晴すばらしきものにて、いまの華族くわぞくなんとして足下あしもとへもらるゝものでなしと、くちすべらしてあわたゞしくくちびるかむもをかし、それくらべていま活計くらしは、きえしもおなじことなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
テイルデンは指を切つてから、かへつて素晴すばららしい当りを見せる様になつた。なぜ指を切つてからの方が、以前よりうまくなつたかと云ふに、一つは彼の気が緊張してゐるからだ。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
だん菅忠雄すがたゞをなどといふところ、そして、そんなふうならべてみると、素晴すばらしい名人試合めいじんしあひばかりやつてゐるやうだが、ときあせにぎるやうな亂牌振らんパイぶりられゝば、颯爽さつさうたる一人拂ひとりばら
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そして絵だの彫刻ちょうこくだの建築だのと違って、とにかく、生きものという生命を材料にして、恍惚こうこつとした美麗びれいな創造を水の中へ生み出そうとする事はいかに素晴すばらしい芸術的な神技であろう
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この素晴すばらしい結論と共に、ブロクルハースト氏はフロック型の外套の一番上のボタンを合せ、立ち上つた家族へ何か小聲で云ひ、テムプル先生に會釋ゑしやくして、さうして、このえらい人々は
明治座は橋にむかった角で、芝居茶屋は右手に並んでやまと、はりまやと五、六軒、通りをへだてた横に日野屋さぬきや六、七軒、楽屋口うらに中村屋が一軒、みんな大間口の素晴すばらしい店だった。
青物もやはり奥へゆけばゆくほどうず高く積まれている。——実際あそこの人参葉にんじんばの美しさなどは素晴すばらしかった。それから水にけてある豆だとか慈姑くわいだとか。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
これは、何と云ふ素晴すばらしい親切さだらう! 私は大膽になつて、質問した。
ところが、なんでも久米正雄夫人くめまさをふじん自身じしん懷姙中くわいにんちう運勢うんせい素晴すばらしかつたことはいまでも鎌倉猛者連かまくらもされんかたぐさになつてゐるくらゐださうだが、ふところはいつてふとるといふ八卦はつけでもあらうか? 少少せうせううがちぎてゐて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
みんな天鵞絨びろうどや絹や毛皮にくるまつた素晴すばらしいなりをしてゐるのだ。