窓掛まどかけ)” の例文
代助は一寸ちよつとはなしめて、梅子うめこ肩越かたごしに、窓掛まどかけあひだから、奇麗なそらかす様に見てゐた。遠くに大きなが一本ある。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
白い蚊帳かやのついた寝台ねだい籐編とうあみの椅子と鏡台と洗面器の外には何もない質素な一室である。壁には画額ゑがくもなく、窓には木綿更紗もめんさらさ窓掛まどかけが下げてあるばかり。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
二階にかい體裁ていさいよき三個みつつへやその一室ひとままどに、しろ窓掛まどかけかぜゆるいでところは、たしか大佐たいさ居間ゐまおもはるゝ。
……かわいいのに目がないから、春も秋も一所いっしょだが、晴の遊戯あそびだ。もうちっと、綺麗きれい窓掛まどかけ絨毯じゅうたんを飾ってもりたいが、庭が狭いから、羽とともに散りこぼれる風情ふぜいの花は沢山ない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでも細君に対する疑惑は薄らがなかったさ、それから五六日して、夕方芝口しばぐちを散歩していると、背後うしろから一台の自動車が来たが、ふと見ると、それには深ぶかと青い窓掛まどかけを垂れてあった
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その岸ともいつつべき張出はりだし欄干近らんかんぢか窓掛まどかけ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
病院の窓の窓掛まどかけれて動かず。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今宵こよひもおなじやうに、しろ窓掛まどかけゆるぐほとりに倚子ゐすならべたとき櫻木大佐さくらぎたいさ眞面目まじめわたくしむかつて。
K君の部屋は美くしい絨氎じゅうたんが敷いてあって、白絹しらぎぬ窓掛まどかけが下がっていて、立派な安楽椅子とロッキング・チェアが備えつけてある上に、小さな寝室が別に附属している。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
病院の窓掛まどかけれて動かず。
心の姿の研究 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
是を蝋そくたてと見たのは三四郎の臆断で、実は何だかわからない。此不可思議の蝋燭たてうしろあきらかなかゞみがある。光線はあつ窓掛まどかけに遮ぎられて、充分に這入らない。其上天気は曇つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
湯から上ったら始めてったかになった。晴々せいせいして、うちへ帰って書斎に這入ると、洋灯ランプいて窓掛まどかけが下りている。火鉢には新しい切炭きりずみけてある。自分は座布団ざぶとんの上にどっかりと坐った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下女の方は案外真面目である。しかもうやうやしい。一旦奥へ這入つて、又て、丁寧に御辞儀をして、どうぞと云ふからいてがると応接間へ通した。おも窓掛まどかけかゝつてゐる西洋室である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)