しっ)” の例文
私しは初め天然の縮毛で無い事をしった時、猶お念の為め湯気で伸して見ようと思い此一本を鉄瓶の口へあてて、出る湯気にかざしました
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
馬鹿言え、乃公おれは国に帰りはせぬぞ、江戸に行くぞと云わぬばかりに、席を蹴立けたてゝ出たことも、のちになれば先方さきでもしって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
日本食事は一向まだ研究がしてない。味噌汁一わんに飯三杯はいくカロリーになるか滅多にしっている医者もあるまい。それだから食餌療法が我邦に行われん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一旦いったん帰京かえって二度目にまた丁度ちょうど行きつきたる田原がきい狼狽ろうばいし、わが書捨かきすてて室香に紀念かたみのこせし歌、多分そなたがしって居るならんと手紙の末にかき頓智とんちいだ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二郎は心のうちで、どうして姉が斯様こんな山道をくわしくしっていようか……斯様なに暗いのにどうして斯様なにみちが分るだろうかといぶかしがりながらるいていた。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
赤十字社とか看護員とかッて、べらんめい、漢語なんかつかいやあがって、何でえ、ていよく言抜けようとしたって駄目だぜ。おいらアみんなしってるぞ、間抜めい。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
石川県へ往って三年ばかりって大阪へまいった所、しっての通り芸子舞子の美人ぞろいだからたまらない、君から貰った三百円もちゃ/\ふうちゃさ、むを得ず立帰たちかえった所が
今度はもう掛値かけねなし、一日もからないと云う日になった、と云うのを私は政府の飜訳局ほんやくきょくに居てつまびらかしって居るからたまらない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お教え申すというほどに出来ませんが奥さんがいらっしゃいましたらおたがいしった事の御交換をして戴きたいのです。小山さんにも先日願いまして南京豆のお料理を
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
恐らく此広い世界でまことの罪人をしったのは己一人だろう、是まで分ッたから後は明日の昼迄には分る、面白い/\、悉皆すっかり罪人の姓名と番地が分るまでは先ず荻沢警部にも黙ッて居て
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
身の分限をしったなら尻尾しりおをさげて四の五のなしにお辰を渡して降参しろ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
時に鉄屋、乃公おれは是から下ノ関に行こうと思うが、実は下ノ関を知らぬ。貴様は諸方を歩くが下ノ関にしってる船宿ふなやどはないか。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
現に私のしった家で舌を注文した処が大層大きくって直段の廉い舌を持って来たそうです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さてこそ子爵が詞通ことばどおり、思想も発達せぬなま若い者の感情、都風の軽薄に流れて変りしに相違なきかとしきりに迷い沈みけるが思いかねてや一声はげしく、今ぞしったり移ろいやすき女心、我を侯爵に見替みかえ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「あア/\うも警察のお手がく行届き、うしても逃れぬ事が出来ぬとしったら、決して悪事は働かぬ所だッたのに」とはある罪人がおのれの悪事露見して判事の前に引据ひきすえられし時の懺悔ざんげの言葉なりとかや
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)