すい)” の例文
疲れているので、一同はそれから一すいの休息をとって、夜に入ってから、また何か重大な凝議ぎょうぎ一間ひとまめ切っていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただしたら、お茶をひいて仲間なかまに笑われることだと答えたそうであるが、彼らは日々の飯さえ遠慮して食い、終夜一すいもせぬことしばしばなるに、身体からだの苦しきよりは
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その慙恨ざんこんじょうられて、一すいだもせず、翌朝よくちょうついけっして、局長きょくちょうところへとわび出掛でかける。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さもなければ怜悧りこうさけよどみにかくれてうごかぬ白晝ひるあひだのみぐつたりとつかれた身體からだわづかに一すいぬすむにぎないので、あさあかるくしろみづにさへ凝然ぢつはなたないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つかのま、ご一すいもあって、みかどは左のひじの矢傷を白布で巻き、ここからは怪しげなあじろ輿ごしの内になって行かれた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すいのひまをぬすむこともできなかったのである。そこでさっきから独りここへ逃避とうひして、柱の下に背をもたせかけたまま、よいこころもちで居眠っていたのであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その晩、相手の男と別れてから、王四は途中の芒原すすきはらで寝てしまった。事これだけなら、その一すいは無上天国そのものだった。ところが折ふし通りかかった猟人かりゅうどがある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
累代るいだい、住み馴れた水分みくまりたちも、ゆうべの一すいをさいごに、いよいよ、今朝は立ち退くことになった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくてすべてに渡って手筈が整うと、孔明は、一すいをとって、黎明れいめい早くも山上へ登って行った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてきょう一日は、夜来やらいすいもせぬ兵馬のため、陣やすみという太鼓だいこがなる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三峰から山づたいに逃げ廻って来るあいだ、ゆうべは一すいもしていなかった。栗だのきのこだの小鳥の肉だの、喰べ物は喰べているが、峠の上へ出るまでは、まったく眠りをわすれていたのである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すいした顔を洗い、髪でもでつけているらしい。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜来、花栄かえいは一すいもしていなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)