真盛まっさか)” の例文
旧字:眞盛
さては薄荷はっか菊の花まで今真盛まっさかりなるに、みつを吸わんと飛びきたはちの羽音どこやらに聞ゆるごとく、耳さえいらぬ事に迷ってはおろかなりとまぶたかたじ、掻巻かいまきこうべおおうに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
雨脚も白く、真盛まっさかりのの花が波を打って、すぐの田畝たんぼがあたかも湖のように拡がって、かえるの声が流れていた。これあるがためか、と思ったまで、雨の白河は懐しい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何は扨置さておき中津にかえって一度母にうてわかれを告げて来ましょうとうので、中津に帰たその時は虎列拉コレラ真盛まっさかりで、私の家の近処きんじょまで病人だらけ、バタ/″\死にました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わたくし三浦みうらとつぎましたのは丁度ちょうど二十歳はたちはる山桜やまざくら真盛まっさかりの時分じぶんでございました。
法水さん、わしならあの三叉箭ボールが、裏庭の蔬菜園から放たれたのだと云いますがな。何故なら、今は蕪菁かぶら真盛まっさかりですよ。矢筈やはずは蕪菁、矢柄やがらよし——という鄙歌ひなうたを、たぶん貴方は御存じでしょうが
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「よい寺じゃなあ。見よ、藤の花が真盛まっさかりじゃ。——風がにおう」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三月の十日であったから花の真盛まっさかりである。
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
南京路ナンキンろ雑沓ざっとうは、今が真盛まっさかりであった。
「頭のさらじゃあないけれど、額の椀のふたは所作真盛まっさかり。——(蟷螂や、ちょうらいや、蠅を取って見さいな)——裸で踊っているのを誰だと思って?……ちょっと?」
冬中ふゆじゅう真盛まっさかりで、春になり夏になると次第に衰えて、暑中二、三箇月のみと交代して引込ひっこみ、九月頃新芋しんいもが町に出ると吾々の虱もた出て来るのは可笑おかしいといった事がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
草いきれ、人のうわさ、七月の暑い真盛まっさかりであった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にもかくにも日本国中攘夷の真盛まっさかりでどうにも手の着けようがない。所で私の身にして見ると、れまでは世間に攘夷論があると云うけの事で、自分の身についあやういことは覚えなかった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
まずし、と早速訪ねて参りましたが、町はずれの侍町、小流こながれがあって板塀続きの、邸ごとに、むかし植えた紅梅が沢山あります。まだその古樹ふるきがちらほら残って、真盛まっさかりの、朧月夜おぼろづきよの事でした。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)