相馬そうま)” の例文
さながら相馬そうまの古御所の妖怪変化が、うしろから、横から、もりあがるように重なりあって、八畳の部屋いっぱいに、ひしめくのです。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
磐城いわきの国では相馬そうま郡の信田沢しださわ石城いわき郡の深山田みやまだの如き名を挙げねばならぬでありましょう。昔から「磐城紙いわきがみ」の名で知られます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
また男を取り殺した例も出でおる。わが国に古くミヅチなる水のばけものあり。『延喜式』下総しもうさ相馬そうま郡に蛟蝄みづち神社、加賀に野蛟のづち神社二座あり。
相馬そうま古御所ふるごしょの破れた翠簾すいれんの外に大きい蝙蝠が飛んでいたなどは、確かに一段の鬼気を添えるもので、昔の画家の働きである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たとえば、ここにある一個の人間の子、相馬そうま小次郎こじろうなども、そうした“地の顔”と“天の気”とを一塊の肉に宿して生れ出たようなわっぱだった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのはずさ。今日は榛名はるなから相馬そうまたけに上って、それからふただけに上って、屏風岩びょうぶいわの下まで来ると迎えの者に会ったんだ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ソノ上僕ハ精力ノ補給ヲスルタメニ相馬そうま博士ニ相談シ、大体月ニ一回男性ホルモンノデポヲ用イテイルノダガ、ソレダケデハマダ不足ナ気ガシ
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まるで明治年間の相馬そうま事件のような騒ぎをひとりでやっていましたが、けっきょくI・I(伝染性精神病)になって脳病院へ入ってしまいました。
ハムレット (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
たとえば山口県の柳井やないではあざみをウサギグサ。これは福島県の相馬そうま地方でも、野薊を馬の牡丹餅ぼたもちというから、多分は兎がよろこんで食べる草という意であろう。
十六代の大蔵おおくら宗政という人が、輝宗さまのとき相馬そうまの合戦で討死をしたことと、次の左馬助さまのすけ宗時という人、この人は頭もよかったし、戦いにも強かったらしい
机の家は相馬そうまの系統を引き、名に聞えた家柄であるが、それよりもいま世間に知られているのは、門を入ると左手に、九歩と五歩とに建てられた道場であります。
艦長相馬そうま大佐をはじめ、幕僚たちや検察隊長の塩田大尉なども、大利根博士を出迎えていました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
星巌夫妻の遊跡をその詩賦に徴するに、行徳より道を北に取って、まず相馬そうま城址じょうしを探り、三月十五日の夕暮に木颪きおろしから舟に乗り月夜利根川を下って暁に潮来に著した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三春みはるの三帥社、会津あいずの愛身社、相馬そうまの北辰社、磐城いわきの興風社、酒田さかたの尽性社、盛岡もりおかの求我社、仙台の鶴鳴社、福島県下の岩磐二州会などは、日本にはじめての政治結社であった。
この使つかいのついでに、明神の石坂、開化楼裏の、あの切立きったての段を下りた宮本町の横小路に、相馬そうま煎餅せんべい——塩煎餅の、焼方の、醤油したじに、何となくくつわの形の浮出して見える名物がある。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
磐城いわき相馬そうまのは流山ぶしの歌にひびき渡りて、その地に至りしことなき人もよく知ったることなるが、しかも彼処といい此処といい、そのまつる所のものの共に妙見尊なるいとおかしく
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
相馬そうま山は一に黒髪山とも唱えて、頂上には御宮が在る。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
相馬そうまは、武骨をもって聞こえる北浜ほくひんの巨藩である。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まさにそれは相馬そうまの古御所の一カットでした。でも貧しく幸せな祝言は、こうして名作天狗長兵衛の観音様の前に営まれたのです。
石焼の方は、肥前ひぜんの影響多く、後者は相馬そうま笠間かさまの系統だという。この土焼の方は主として雑器であるから格が一段と下るものと見做みなされている。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
磐城いわき相馬そうま地方などでは、彼らをテンバと呼んでいる。山の中腹の南に面した処に、いくつかの岩屋がある。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
将門の遺族が相馬そうまへはなぜ隠れないで、わざわざこんな処へ落ちて来たかを論じたくない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
下野しもつけの城主大内国時くにときの一族をはじめ、久下田太郎くげたのたろう秀国、真壁の郡司や相馬そうまの城主高貞たかさだなど——そういった歴々の帰依者きえしゃも、きょうはすでに家臣をひきいて、本堂の左右にいながれ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そもそもこの山水土瓶の歴史を顧みますと、北は相馬そうま益子ましこ、中部は信楽しがらき明石あかし、南は野間のま皿山さらやまにも及び、多くの需用があって各地で盛に描かれました。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
入口を一パイに飾ったのは、遠見を使った相馬そうまの古御所、人形をあしらって、これは通り一ぺんの出来ですが、細い道を辿たどって、奥へ踏み込むと驚きました。
常陸路ひたちじの方から今、ひとりの旅人が歩いて来る。相馬そうま将門まさかどが、坂東ばんどうに暴勇をふるって、矢うなりをほしいままにした頃から、この辺りの道もやぶもそのままにあるように蕭々しょうしょうとしたものだった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)