甲斐々々かひ/″\)” の例文
度目どめめたときかれおどろいてきた。縁側えんがはると、宜道ぎだう鼠木綿ねずみもめん着物きものたすきけて、甲斐々々かひ/″\しく其所そこいらをいてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
藤八は是々途中から御客を連て來たと云うちに十六七の娘甲斐々々かひ/″\しくたらひに湯を取てもち來り御洗ひ成れましと顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
昨夜来たばかりの彼女は珍らしく今朝から老母に代つて早起して甲斐々々かひ/″\しくかすり鯉口こひぐちの上つ張りを着て、心持寝乱れの赤い手柄の丸髷にあねさんかぶりをして、引窓の下の薄明るいへつつひの前に
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
余念も無く蕪菜かぶなを洗ふ女の群の中に、手拭に日をけ、白い手をあらはし、甲斐々々かひ/″\しく働く襷掛たすきがけの一人——声を掛けて見ると、それがお妻で、丑松は斯の幼馴染の様子の変つたのに驚いてしまつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
みじかくはぎけて甲斐々々かひ/″\しい。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分じぶん責任せきにんすこしでもくははつたため、こゝろ緊張きんちやうしたものとえて、かへつて平生へいぜいよりは、甲斐々々かひ/″\しくをつと小六ころく世話せわをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
只一日の如く甲斐々々かひ/″\しく看護みとり仕つりし其孝行を土地ところの人も聞傳きゝつたへてほめ者にせられしが遂に其甲斐かひなく十四歳のみぎり右母病死びやうし仕つり他にたよるべき處もなきにより夫より節を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
懷中くわいちうなし甲斐々々かひ/″\しき出立いでたちにて逃出さんとするところへ火事騷くわじさわぎの中なれ共家主吉兵衞きちべゑは大切の囚人めしうどの女房ゆゑ萬一取逃とりにがしもせば役儀やくぎかゝると駈着かけつけ來りいま逃出んとするお政を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さあ、もう時間じかんよ」と注意ちゆういしたとき、かれこの點滴てんてきおときながら、もうすこあたゝかい蒲團ふとんなかぬくもつてゐたかつた。けれども血色けつしよくくない御米およねの、甲斐々々かひ/″\しい姿すがたるやいな
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)