獅子吼ししく)” の例文
が、勝家は、何と思ったか、あぶみのかかとで馬腹を蹴り、まぶたにせぐりくるもろいものを、われとわが獅子吼ししくをもって、追い払うように
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名を忘れてしまってすまないが何とかいう黒いあごひげを生やした、声の大きい熱心な牧師さんがいていつも獅子吼ししくしていられた。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
維摩、勝鬘の二経は、一は老熟の男性の口をり、一は妙齢婦人の言葉を藉りて、勇敢なる生活の理想化を獅子吼ししくさしている経であります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
父は、そう叫びながら、手近にあるデスクの端を力まかせに二三度打った。瑠璃子には、父が貴族院の演壇で獅子吼ししくする有様が、何処どことなくしのばれた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
おぎんは釈迦が生まれた時、天と地とを指しながら、「天上天下てんじょうてんげ唯我独尊ゆいがどくそん」と獅子吼ししくした事などは信じていない。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
獅子吼ししくしたあとではあり、別に新しい種もないので、誰も口をきく者もなかったのに、一人の十八、九の若僧が出しゃ張って、何う変り栄えもせぬ事を
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
台坐には、十一坐、九重ここのえ坐、七重ななえ坐、蓮坐、荷葉かよう坐、多羅葉たらよう坐、いわ坐、雲坐、須弥しゅみ坐、獅子吼ししく坐、円坐、雷盤らいばん坐等で、壇には護摩壇、須弥壇、円壇等がある。
紅露は相対塁あいたいるいして互にを称し、鴎外おうがい千朶せんだ山房に群賢を集めて獅子吼ししくし、逍遥は門下の才俊を率いて早稲田に威武を張り、樗牛ちょぎゅうは新たにって旗幟きしを振い
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼等は「鉱毒の田中」「直訴の田中」かうした記憶を朧ろげながらほ何処かに持つて居るだらう。この人の演説、真に獅子吼ししくの雄弁を必ず思ひ出すであらう。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
実に今日は、レオニダスのごとき大政治家づるか、日蓮のごとき大宗教家現われ、鉄腕をふるい、獅子吼ししくを放って、国民の惰眠を覚醒せねばならぬ時代であろう。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
けれども時代の意識は朦朧もうろうとして、なおこの至理に通徹するを得ず、一夫多妻の宿弊滔々とうとうたる時に、大胆にも基督キリストちまた獅子吼ししくして、一夫一婦論を提唱したのであったから
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
彼は「権威ある者の如く」に語り、既成教団をせめ、世相を嘆き、仏法、王法二つながら地におちたことを悲憤して、正法を立てて国を安らかにし、民を救うの道を獅子吼ししくした。
しかして彼が従来の歌劇オペラを捨て、其の芸術綜合の信念と目的とを表現したる初めての獅子吼ししく『タンホイゼル』は、実にこの惨憺たる悲境に於て、彼の頭脳に胚胎はいたいしたりし者なる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
当時栄玄の妻は既に歿していたから、これは河東かとう獅子吼ししくを恐れたのではなく、全く主人の性癖のためであった。抽斎は五百にはかって苫を貰い受け、後下総しもうさの農家に嫁せしめた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
獅子は久しく眼に見えぬおりの中で獅子吼ししくをしたり、まりもてあそんだり、無聊むりょうもだえたりして居ましたが、最後に身をおどらして一躍いちやく檻外らんがいに飛び出で、万里の野にはしって自由の死を遂げました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
獅子吼ししく一番して、青龍刀を高く振りかぶると、ざぶんと、水しぶき血しぶき一つの中に、荀正を真二つに斬り捨てていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(それは母胎を離れた後、「唯我独尊」の獅子吼ししくをした仏陀よりもはるかによりのないものである。)
続西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
逍遙子は類想の固有派、個想の折衷派、小天地想の人間派の別を立て、さて獅子吼ししくをなしていはく。此別を非なりとする人あらむ。其人は事物の平等を見て、差別を見ざる人なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
事実、明慧上人のこの獅子吼ししくがあらわれてから、吉水禅房の内部にも、かすかな信仰の揺るぎがきざしてきた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若い肉体は、獅子吼ししくしてそう云うとすぐ、ひよどりのごとく、さかさまに駈けていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
威猛高いたけだか獅子吼ししくである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお獅子吼ししくしていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魏王は、獅子吼ししくした。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
獅子吼ししくした。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)