物寂ものさび)” の例文
そしてれて、またあたりが物寂ものさびしく、くらくなったときは、おじいさんは、こまどりのはいっているかごをいえなかれて、自分じぶん仕事場しごとばのそばのはしらにかけておきました。
こまどりと酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
入相いりあいの浪も物凄ものすごくなりかけた折からなり、あの、赤鬼あかおに青鬼あおおになるものが、かよわい人を冥土めいど引立ひきたててくようで、思いなしか、引挟ひきはさまれた御新姐ごしんぞは、何んとなく物寂ものさびしい、こころよからぬ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ついこの間まではまばらな杉垣の奥に、御家人ごけにんでも住み古したと思われる、物寂ものさびた家も一つ地所のうちにまじっていたが、崖の上の坂井さかいという人がここを買ってから、たちまち萱葺かやぶきを壊して
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
叩頭馴おじぎなれて、うまれついて車夫くるまやらしいのも、うすいのが物寂ものさびしい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つい此間このあひだまでまばらな杉垣すぎがきおくに、御家人ごけにんでもふるしたとおもはれる、物寂ものさびいへひと地所ぢしよのうちにまじつてゐたが、がけうへ坂井さかゐといふひと此所こゝつてから、たちま萱葺かやぶきこはして、杉垣すぎがきいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みせかまどうへで、ざるすかすまで、あか/\とのさしたところは、燒芋屋やきいもやとしては威嚴ゐげんとぼしい。あれはれるほどなさむばんに、ぱつといきれがつにかぎる。で、白晝はくちう燒芋屋やきいもやは、呉竹くれたけさと物寂ものさびしい。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遠山とほやまゆきかげすやうで、夕餉ゆふげけむり物寂ものさびしうたにおちる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)