澁茶しぶちや)” の例文
新字:渋茶
と投出すやうに謂ツて湯呑ゆのみを取上げ、冷めた澁茶しぶちやをグイと飮む。途端とたん稽古けいこに來る小娘こむすめが二三人連立つれだツて格子を啓けて入ツて來た。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「此間から、神明の水茶屋の、お常の阿魔あまに熱くなりあがつて、毎日入りびたつて、澁茶しぶちやで腹をダブダブにしてやがつたよ」
こゑきくよすがもらざりければ、別亭はなれ澁茶しぶちやすゝりながらそれとなき物語ものがたり、この四隣あたりはいづれも閑靜かんせいにて、手廣てびろ園生そのふ浦山うらやましきものなり、此隣このとなりは誰樣たれさま御別莊ごべつさう
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
がけうへ觀音樣くわんのんさまには茶店ちやみせがありました。密柑みかんやたまご 、駄菓子だぐわしなんどをならべて、參詣者おまへりびと咽喉のど澁茶しぶちやしめさせてゐたそのおばあさんは、苦勞くらうしぬいてひとでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
……それよりして、倶利伽羅くりからかゝる、新道しんだう天田越あまたごえたうげで、力餅ちからもちを……べたかつたが澁茶しぶちやばかり。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人にすぐれしかど容體なりふりもなく缺茶碗かけぢやわん澁茶しぶちや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あれから毎日お常の茶屋に入り浸つて、澁茶しぶちやに駄菓子で納まらなくなると、奧へはひり込んで、一本付けさせ、お常の酌で遲くまで飮んだりするやうになりました。
からうじて腕車くるまくゞらしたれば、あみにかゝつたやうに、彼方あなた此方こなたを、すゞめがばら/\、ほら蝙蝠かうもりるやうだつた、と車夫同士くるまやどうしかたりなどして、しばらく澁茶しぶちやいちさかえる。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
厚く申のべ澁茶しぶちやながらくみて出しければ長兵衞はコレ/\御構おかまひなさるな時に今日は出初ではじめなるが長八樣はおかへりかと云に女房にようばう宿やどではかへりませんと云へば長兵衞夫は大そうおそい事だ如何して居らるゝやとうはさをりから長八はかへり來りしが親分おやぶん長兵衞の來て居るとはゆめにも知らずオイおうめいまかへりたりヤレ/\今日けふは初めてとは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其處で編笠を借りて冠つて、厄介な荷物は預けて、吉原へ繰り込むのですが、澁茶しぶちや一碗の設備もあり、店には美しい娘などを置いて、客を呼ぶにおろそかはありません。
ばあさんに澁茶しぶちやをくんでもらひながら
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は荒物屋の女房の好意で日蔭にも澁茶しぶちやにも有り付きましたが、氣のきかない野良犬のやうに、小日向こびなたの草原に潜り込んだガラツ八は、眞上から初夏の陽に照りつけられて