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しぶちや
聲きくよすがも
有らざりければ、
別亭に
澁茶すゝりながら
夫となき
物語、この
四隣はいづれも
閑靜にて、
手廣き
園生浦山しきものなり、
此隣りは
誰樣の
御別莊ぞ
崖の
上の
觀音樣には
茶店がありました。
密柑やたまご 、
駄菓子なんどを
並べて、
參詣者の
咽喉を
澁茶で
濕させてゐたそのおばあさんは、
苦勞しぬいて
來た
人でした。
其上、もう
気がたるみ、
筋が
弛んで、
早や
歩行くのに
飽が
来て
喜ばねばならぬ
人家が
近いたのも、
高がよくされて
口の
臭い
婆さんに
渋茶を
振舞はれるのが
関の
山と、
里へ
入るのも
厭になつたから