“湖畔(こはん)” の例文
彼は幾つかのこの湖畔(こはん)の水産に関係ある家に試験所の用事で出入りをしているうち、その家々で二三人の年頃の娘とも知合いになった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのとき湖畔(こはん)につり糸をたれていたガーネットが三人のボートを見るやいなや、さおをすてて洞穴へ走り、三人の帰着をしらせたので
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
画面点景(がめんてんけい)の寸馬豆人(すんばとうじん)そのまま、人も小さく馬も小さくしか見えないが、たしかに流星のごときはやさで湖畔(こはん)をはしってくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(はがき)今日(きょう)越後(えちご)の新津(にいつ)を立ち、阿賀野川(あがのがわ)の渓谷を上りて会津(あいづ)を経、猪苗代(いなわしろ)湖畔(こはん)の霜枯れを圧する磐梯山(ばんだいさん)のすさまじき雪の姿を仰ぎつつ郡山(こおりやま)へ。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
湖畔(こはん)五里余(りあま)り、沿道(えんだう)十四里(り)の間(あひだ)、路傍(ろばう)の花(はな)を損(そこ)なはず、樹(き)の枝(えだ)を折(を)らず、霊地(れいち)に入(い)りました節(せつ)は、巻莨(まきたばこ)の吸殻(すいがら)は取(と)つて懐紙(くわいし)へ——マツチの燃(も)えさしは吹(ふ)き消(け)して
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
そう云えばあの時は宮の下のフジヤホテルに泊り、翌日蘆(あし)の湖畔(こはん)をドライヴしたりしたので、環境の類似が自(おのずか)ら二人を昔の世界へ呼び戻したのであったかも知れない。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
未明に鉄舟寺を辞すると、まず竜華寺(りゅうげじ)の日の出の富士(ふじ)を仰(あお)ぎ、三保(みほ)の松原(まつばら)で海気を吸い、清水駅から汽車で御殿場(ごてんば)に出て、富士の裾野(すその)を山中湖畔(こはん)までバスを走らせた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
尻上りのそこの語もきゝなれては、さまでに耳に悪しからず、晩翠(ばんすゐ)湖畔(こはん)花郷(くわきやう)臥城(ぐわじやう)など、親しうする友達の情にほだされて、つひうか/\と十日許りを旅館に打ち過ごしたり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
初めは湖畔(こはん)に出て侵略者(しんりゃくしゃ)を迎(むか)え撃(う)った彼等も名だたる北方草原の騎馬兵(きばへい)に当りかねて、湖上の栖処(すみか)に退いた。湖岸との間の橋桁(はしげた)を撤(てっ)して、家々の窓を銃眼(じゅうがん)に、投石器や弓矢で応戦した。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
同氏は故福川氏の依頼により旅行中のS湖畔(こはん)より急遽(きゅうきょ)上京の途中、突然行衛不明となったもので、恐らく福田氏殺害犯人の魔手に陥ったのではないかと見られていたが、今や同氏の死体発見され
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
サクラ号から持ってきた、二門の大砲がすえられて、一つは表の川に面する口をまもり、一つは湖畔(こはん)に面する口をまもる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ひらりと、宮の縁(えん)から飛びおりるがはやいか、湖畔(こはん)にそびえている樅(もみ)の大樹(たいじゅ)へ、するするすると、りすの木のぼり、これは、竹童ならではできない芸当(げいとう)。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それよりして奥入瀬川(おいらせがは)の深林(しんりん)を穿(うが)つて通(とほ)る、激流(げきりう)、飛瀑(ひばく)、碧潭(へきたん)の、到(いた)る処(ところ)に、松明(たいまつ)の如(ごと)く、灯(ともしび)の如(ごと)く、細(ほそ)くなり小(ちひ)さくなり、また閃(ひらめ)きなどして、——子(ね)の口(くち)の湖畔(こはん)までともなつたのは、この焚火(たきび)と
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ある日かれらは、湖畔(こはん)にそうて一キロメートルばかり北の森のなかにはいってゆくと、そこに人の手をもってほったとおぼしき深い穴がいくつもあるのを見た。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「穴山の残党なら、湖畔(こはん)で伊那丸のために討ちもらされた落武者(おちむしゃ)だろう。こんなときには、少しのやつも味方の端(はし)だ。そのなかからおもだった者だけ二、三人とおしてみろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも工事の督励(とくれい)は急速を極めて、夜も日もあったものでなく、起工以来まだ一年にも満たないまに、湖畔(こはん)の一丘には大体その骨組を完成し、広茫(こうぼう)な桑田や畑は、新しい城下町と化していた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湖畔(こはん)の水門から湖上へ浮かび出た屋形造(やかたづく)りの一艘(そう)がそれだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)