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温味
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あたたかみ
ふりがな文庫
“
温味
(
あたたかみ
)” の例文
一言すれば理窟ばかりで、面白味も
温味
(
あたたかみ
)
もない冷たい重苦しい感じのする人物だった。世辞も愛嬌もないブッキラ棒な無愛想な男だった。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その乏しい余裕を
割
(
さ
)
いて一般の人間を広く
了解
(
りょうかい
)
しまたこれに同情し得る程度に互の
温味
(
あたたかみ
)
を
醸
(
かも
)
す法を講じなければならない。
道楽と職業
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手をやって払い
除
(
の
)
けようとしたが、そのひょうしに手の
端
(
さき
)
に生物の
温味
(
あたたかみ
)
を感じたので、力を入れて握り締めた。
狼の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
慥
(
たし
)
かにまだ息がある。手首を握ってみると、最初は殆ど分らないほど微かだった脈が、段々はっきりと指先に触れてきた。どうやら
温味
(
あたたかみ
)
も戻って来るようだ。
黒猫十三
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
あの人たちは、みなじぶんを心の
底
(
そこ
)
からいとしんでくれる、
骨肉
(
こつにく
)
のようなやさしさと、
温味
(
あたたかみ
)
をもっている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
いかに
野育
(
のそだ
)
ちの彼でも多少の理屈は
呑込
(
のみこ
)
めるのである。
加之
(
しか
)
も
是
(
これ
)
はお葉の説教である。復讐に
凝固
(
こりかたま
)
った彼の
頭脳
(
あたま
)
の氷も、愛の
温味
(
あたたかみ
)
で少しく
融
(
と
)
け
初
(
そ
)
めて来たらしい。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
男のからだには、まだ
温味
(
あたたかみ
)
があった。正太が彼のからだをうごかすと、その男はかすかに
呻
(
うな
)
った。
人造人間エフ氏
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まして近ごろ多くの人が従事する仕事には心尽しの
温味
(
あたたかみ
)
があって、始めて
完美
(
かんび
)
するものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
只管
(
ひたすら
)
欲するように、他人との
軋轢
(
あつれき
)
や争いに胸を傷つけられ、瑠璃子夫人に対する幻滅で心を痛めた信一郎は、家庭の持っている平和や、妻の持っている
温味
(
あたたかみ
)
の裡に、一刻も早く
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
霰は、令一の
衣物
(
きもの
)
の上に当って、ころころと
袂
(
たもと
)
を
振
(
ふる
)
うたびに散ってしまった。けれど頭髪の中に落ちたものや、襟元に溜ったものは、その儘白くなって、体の
温味
(
あたたかみ
)
で解けかかった。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私は彼女の
呼気
(
いき
)
の
温味
(
あたたかみ
)
を頬に感じました。彼女の鼓動を私の胸に感じました。
悪魔の聖壇
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
部屋着を脱ぐと、
緋
(
ひ
)
の
襦袢
(
じゅばん
)
で、素足がちらりとすると、ふッ、と行燈を消しました。……底に
温味
(
あたたかみ
)
を持ったヒヤリとするのが、酒の
湧
(
わ
)
く胸へ、今にもいい
薫
(
かおり
)
で
颯
(
さっ
)
と
絡
(
まつ
)
わるかと思うと、そうでないので。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、こう考えると、彼の空中に編み上げる勝手な
浪漫
(
ロマン
)
が急に
温味
(
あたたかみ
)
を失って、
醜
(
みに
)
くい想像からでき上った雲の峰同様に、意味もなく崩れてしまった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
直ぐにむっちりと弾力のある乳房が手に触れたが、その胸にはもう、彼を散々悩ましたあの
灼
(
や
)
けつくような熱は無く、わずかに冷めて行くほの
温味
(
あたたかみ
)
しか感じられなかった。
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
続いて𤢖の為に左の
股
(
もも
)
を
傷
(
きずつ
)
けられた。
加之
(
しか
)
も二度目の傷は刃物で突かれたと見えて、
洋袴
(
ずぼん
)
に
滲
(
にじ
)
み出る
鮮血
(
なまち
)
の
温味
(
あたたかみ
)
を覚えた。
究竟
(
つまり
)
彼は左の片足に二ヶ所の傷を負っているのであった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それに肉のないすうッとした高い鼻というものはまた
温味
(
あたたかみ
)
にとぼしいものでしょう。
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
衒
(
てら
)
い
気
(
け
)
のないその態度がお延には
嬉
(
うれ
)
しかった。彼女は慰さめるような
温味
(
あたたかみ
)
のある調子で答えた。言葉遣いさえ吾知らず、
平生
(
ふだん
)
の自分に戻ってしまった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それがものの二十間とも歩かないうちに以前の感情はどこかへ消えてしまって、打って変った一種の
温味
(
あたたかみ
)
を帯びた心持で
後帰
(
あとがえ
)
りをしたのはなぜだか分らない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
我々は夕暮の
本郷台
(
ほんごうだい
)
を急ぎ足でどしどし通り抜けて、また向うの
岡
(
おか
)
へ
上
(
のぼ
)
るべく小石川の谷へ下りたのです。私はその
頃
(
ころ
)
になって、ようやく
外套
(
がいとう
)
の下に
体
(
たい
)
の
温味
(
あたたかみ
)
を感じ出したぐらいです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
劇
(
はげ
)
しい労役の結果早く年を取るんだとも解釈は出来るが、ただ天然自然に年を取ったって、ああなるもんじゃない。丸味とか、
温味
(
あたたかみ
)
とか、
優味
(
やさしみ
)
とか云うものは薬にしたくっても、探し出せない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
温
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
味
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“温”で始まる語句
温
温和
温泉
温順
温柔
温気
温暖
温泉宿
温泉場
温習