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ふりがな文庫
“
渡船
(
わたし
)” の例文
五
町田
(
ちやうだ
)
の
渡船
(
わたし
)
はそれでも風景に富んで居た。水は余りに長い平凡に堪へないといふやうに、一ところ凄じい勢をなして流れた。
草津から伊香保まで
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「アッ。月島の
渡船
(
わたし
)
に乗ったんだね。成る程成る程。その時にアンタと一緒に乗っていた二人の男の
風体
(
ふうてい
)
を
記憶
(
おぼ
)
えているかね」
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが
詭計
(
て
)
だよ。往きは
渡船
(
わたし
)
で行って、帰りに知合の船頭に頼んで船に乗せて貰ったと言うのが
可怪
(
おか
)
しいと思わなかったかい。
銭形平次捕物控:040 大村兵庫の眼玉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
二人はしかたなしに仕事を
止
(
や
)
めて帰って来たが、
渡頭
(
わたし
)
へ来てみると、
渡船
(
わたし
)
はもう止まって、船は向う岸へつないであった。
雪女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
住吉の
渡船
(
わたし
)
をわたって通い、日本橋植木
店
(
だな
)
の藤間の家元に踊りをならいなどして、劇作を心がけ、坪内先生によって新舞踊劇にこころざしていた。
旧聞日本橋:25 渡りきらぬ橋
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
なぜならば
早駕
(
はや
)
は何うしても
渡船
(
わたし
)
に
拠
(
よ
)
らなければならないが、清水一学は、
浅洲
(
あさす
)
を拾って馬を乗り入れ、
無礙
(
むげ
)
に対岸へ渡ってしまったからである。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
途中あれはなんといったでしょうか、
渡船
(
わたし
)
がある。私にこの船賃がないんです。といってまさかに泳いでも渡れない。
初看板
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「江藤警部補、これはいったい、どうしたということなんです。
貴方
(
あなた
)
は、あの不審な男を
渡船
(
わたし
)
に乗せてしまって……」
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
其の内追々山水が出たので、道も悪し、
板鼻
(
いたはな
)
の
渡船
(
わたし
)
も止り、其の
他
(
ほか
)
何処
(
どこ
)
の渡船も止ったろうと云われ、仕方がなしに足を止めて居ります内に、心配致すのはいかんもので
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
たゞ大南風に
渡船
(
わたし
)
のぐらつくをも怖るゝ如き船嫌ひの人〻の、更に水の東京の景色も風情も実利も知らで過ごせるものに、
聊
(
いささ
)
かこの大都の水上の一般を示さんとするに過ぎねば
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
渡船
(
わたし
)
を渡らなければならなかった。で彼は渡船を渡った。
天主閣の音
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それが
詭計
(
て
)
だよ。往きは
渡船
(
わたし
)
で行つて、歸りに知合の船頭に頼んで船に乘せて貰つたと言ふのが可怪しいと思はなかつたかい。
銭形平次捕物控:040 兵庫の眼玉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
木津の
渡船
(
わたし
)
で、すこし、うるさいことがあったので、
宿
(
しゅく
)
の辻で待ちあわしているようにと、自分は、一足後から駈けつけてきたのであったが——。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
己
(
じぶん
)
の家の方へ帰っていたと思っていたものが、反対に隣村の方へ往って、其処の
渡船
(
わたし
)
場へ出てやっと気が
注
(
つ
)
いたと云うような話は
平常
(
いつも
)
のことであった。
村の怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ねえ、この淋しさったら、お話しじゃないじゃないの。橋が落ちて、
渡船
(
わたし
)
が出来てからは、なんだか、
人別
(
にんべつ
)
を
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
本佃
(
ほんつくだ
)
の住吉の
渡船
(
わたし
)
でくるか、永代橋のきわから出て、父の閑居の門前につく渡船に乗るかが多かった。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
大高島に渡る
渡船
(
わたし
)
の中にかれはいた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その歓びにはしゃいで、問わず語りに彼が
喋舌
(
しゃべ
)
るには——江戸から大和まで来る間、川の
渡船
(
わたし
)
に幾たびも乗ったが、海の船にはまだ乗ったことがない。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渡守の常七は、
渡船
(
わたし
)
小屋のなかで火を焚きながら草鞋を造っていた。静な晩で、小屋の
前
(
さき
)
を流れている仁淀川の水が、ざわざわと云う単調な響をさしていた。
八人みさきの話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
風が
凪
(
な
)
いで、波に隠れていた、
渡船
(
わたし
)
の灯がまた現われた。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「ウム、空模様さえよければ、夜旅をかけて
矢走
(
やばせ
)
の
渡船
(
わたし
)
に夜を
更
(
ふ
)
かすのもいいが、この
按配
(
あんばい
)
では危なッかしい……」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのうちに一年ばかり
経
(
た
)
った。それは
木枯
(
こがらし
)
の寒い夕方であった。巳之吉は森からの帰りに
渡船
(
わたし
)
に乗ったところで、風呂敷包を湯とんがけにした田舎娘が乗っていた。
雪女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「おばばが、
仇
(
かたき
)
とねらって探している、宮本武蔵という野郎よ。——隅田川の
渡船
(
わたし
)
から降りた所で見かけたんだ」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
渡船
(
わたし
)
からちょっと来た処の蘆の中へ、女子が入って往くのを見ましたが、それでございますか」
女賊記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
岩井の
館
(
たち
)
は
猿島
(
さしま
)
郡だ。相馬から
渡船
(
わたし
)
で一水を越える地にある。船中で酒を酌みあい、寒いが、気は晴れてきた。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
多摩川
(
たまがわ
)
縁
(
べり
)
になった
調布
(
ちょうふ
)
の在に、
巳之吉
(
みのきち
)
という若い
木樵
(
きこり
)
がいた。その巳之吉は、毎日
木樵頭
(
さきやま
)
の
茂作
(
もさく
)
に
伴
(
つ
)
れられて、多摩川の
渡船
(
わたし
)
を渡り、二里ばかり離れた森へ仕事に通っていた。
雪女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
早瀬へ、
渡船
(
わたし
)
はかかっていた。
下流
(
しも
)
へ下流へと、船脚はながされてゆく。箭四郎のすがたが、次第に小さくなった。若い
男女
(
ふたり
)
のすがたに、朝の
陽
(
ひ
)
が、かがやいていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
常七は気がつくと舟を飛びおりて
渡船
(
わたし
)
小屋へ駈け込んだ。
八人みさきの話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
本街道なら珍しくもないが、播州路から
岐
(
わか
)
れて
高取越
(
たかとりご
)
えを経た上、
千種川
(
ちぐさがわ
)
の
渡船
(
わたし
)
をこえてこの城下へと入る赤穂街道を、一かたまりの
提灯
(
ちょうちん
)
が、
暁闇
(
ぎょうあん
)
の中を走って来るのである。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
渡船
(
わたし
)
……」
八人みさきの話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と、さっき
渡船
(
わたし
)
の中へ忘れてしまうところだった
襤褸
(
つづれ
)
の巾着を、武蔵の手に預けた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「うるさかったら乗ってくンねえ。陽のあるうちに
矢走
(
やばせ
)
の
渡船
(
わたし
)
を越えて、草津泊りは楽なもんでさ。下駄ばきでカラコンカラコンやっていた日には、これから大津までもむずかしゅうがすぜ」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まず大山街道へ出て、玉川の
渡船
(
わたし
)
を
経
(
へ
)
、東海道へ出ようと兵庫はいう。お通の塗笠には、もう夜の露が濡れ
初
(
そ
)
めていた。草深い
谷間川
(
たにあいがわ
)
に沿って歩くと、やがてかなり道幅のひろい坂へかかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女中も連れずに、九条の
渡船
(
わたし
)
のほとりを、しょんぼりと歩いてきた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分はお十夜の眼から
遁
(
のが
)
れるため、わざとこの松原に姿を隠し、もし
矢走
(
やばせ
)
へ出る
渡船
(
わたし
)
があったら、草津あたりで宿をとろうと考えている間に、今夜の
大嵐
(
おおあらし
)
に逢って
退
(
の
)
ッ
引
(
ぴ
)
きならなくなったのだけれど
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渡船
(
わたし
)
が出る。範宴は、性善坊と一緒に、
舷
(
ふなべり
)
へ立った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“渡船”の意味
《名詞》
渡 船(とせん)
渡し舟。
(出典:Wiktionary)
“渡船(渡し船)”の解説
渡し船(わたしぶね)とは、港湾・河川・湖沼などで両岸を往復して客や荷物を運ぶ船及び航路のことである。渡船(とせん)とも言う。また、渡し船に乗り降りするところを渡し場(わたしば)、渡船場(とせんじょう、とせんば)などという。
(出典:Wikipedia)
渡
常用漢字
中学
部首:⽔
12画
船
常用漢字
小2
部首:⾈
11画
“渡船”で始まる語句
渡船場
渡船小屋
渡船銭
渡船口
渡船塲
渡船守
渡船者
渡船場中
渡船稼業