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沈淪
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ちんりん
ふりがな文庫
“
沈淪
(
ちんりん
)” の例文
芸術家でも時に
容
(
い
)
れられず世から
顧
(
かえり
)
みられないで自然本位を押し通す人はずいぶん
惨澹
(
さんたん
)
たる境遇に
沈淪
(
ちんりん
)
しているものが多いのです。
道楽と職業
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
経済的に独立する自覚と努力とさえ人間にあればその境遇に
沈淪
(
ちんりん
)
することを
予
(
あらかじ
)
め避けることの出来る性質の不幸だと思います。
平塚さんと私の論争
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
この理を明らかにさせたまえ。罪なくして罪に当たり、官位を
剥奪
(
はくだつ
)
され、家を離れ、故郷を捨て、朝暮歎きに
沈淪
(
ちんりん
)
したもう。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
が、この地下の一室に設けられたバー・オパールの空気だけは、
森閑
(
しんかん
)
として、このバーが設けられて以来の、変りない薄暗さの中に
沈淪
(
ちんりん
)
していた。
白金神経の少女
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
私は上編において今日多数の人々が貧乏線以下に
沈淪
(
ちんりん
)
していることを述べたが、これらの人々は
孟子
(
もうし
)
のいわゆる恒産なきのはなはだしきものである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
▼ もっと見る
そしてかかるどん底への
沈淪
(
ちんりん
)
において、最後の深みに陥ってる彼らは最後の変容を受けていた。
愚蒙
(
ぐもう
)
に変じた無知は絶望に変じた知力と同等だった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
其他同様の
境界
(
きょうがい
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
して居た者共は、自然関東へ流れ来て、秀吉に敵対行為を取った小田原方に居たから、小田原没落を機として氏郷の招いだのに応じて
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
古来多くの科学者がこのために迫害や
愚弄
(
ぐろう
)
の焦点となったと同様に、芸術家がそのために悲惨な境界に
沈淪
(
ちんりん
)
せぬまでも、世間の反感を買うた例は少なくあるまい。
科学者と芸術家
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
真の人間を作るには学問教育よりは人生の実際の塩辛い経験が大切である事、茶屋女とか芸者とかいうような下層に
沈淪
(
ちんりん
)
した女が案外な道徳的感情に富んでいて
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そうして脳髄自身の権威を、どこまでもどこまでも高めて行く一方に、その脳髄の権威を迷信している人類を、日に日に、一歩一歩と堕落の淵に
沈淪
(
ちんりん
)
させている。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お六は再び悪者に引戻され、美貌と器用さを重宝がられて、浮ぶ瀬もなく悪事に
沈淪
(
ちんりん
)
していたのです。
銭形平次捕物控:082 お局お六
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
もっとも、人間界よりだんだん下界に
沈淪
(
ちんりん
)
するは迷惑なれども、上界に昇進することは、日本見物や西洋見物よりも、はるかに勝りておもしろかろうかと察します。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
その惰力さえ尽き果てて、生きながら社会より埋葬せらるる如き悲境に
沈淪
(
ちんりん
)
するものの多いのは、
畢竟
(
ひっきょう
)
この時代の進運に伴うべき気力と智識とが欠乏しているからである。
我輩の智識吸収法
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
実在の
苦境
(
くぎょう
)
の外に文三が別に
妄念
(
もうねん
)
から一
苦界
(
くがい
)
を産み出して、求めてその
中
(
うち
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
して、あせッて
踠
(
もが
)
いて
極大
(
ごくだい
)
苦悩を
甞
(
な
)
めている今日この頃、我慢
勝他
(
しょうた
)
が
性質
(
もちまえ
)
の叔母のお政が
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
現に大いなる堕落に
沈淪
(
ちんりん
)
しているのであって、我々はかかる封建遺性のカラクリにみちた「健全なる道義」から転落し、裸となって真実の大地へ降り立たなければならない。
続堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
弾力性のつよい情熱家ほど、こういう悩みの中に
沈淪
(
ちんりん
)
してゆくのが人間性の本態でもあろう。常に絶対の確信をもって、政策の実行に殉じたという政治家はほとんどあるまい。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
実は最も「神を怒ら」するものである。彼らの類は世に
甚
(
はなは
)
だ多く、しかして富み栄えかつ安らかである。それに比して
義
(
ただ
)
しき者の悲境に
沈淪
(
ちんりん
)
せるは何の故ぞと、ヨブは疑うのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
かかる場合においては万々やむをえず、泣く泣くもたとい一国を
身代
(
しんだい
)
限りの
悲堺
(
ひかい
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
せしむるも武備の用意をなさざるべからず。すなわち独仏の関係は歴史的の記憶あるがためなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この上尾貞七と
謂
(
い
)
ふのは、根本三之助などと同じく、一時は非常に逆境に
沈淪
(
ちんりん
)
して、村には殆ど身を
措
(
お
)
く事が出来ぬ程に
為
(
な
)
つた事のある男で、それから
憤
(
いきどほり
)
を発して、江戸へ出て、廿年の間に
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
曾
(
か
)
つて之を争ひしが為めにワルレンスタインは悲苦の境界に
沈淪
(
ちんりん
)
したり。マクベスは間接に道徳に抵触したる所業をしたり。天神記の松王は我愛子を殺したり。娘節用の小三は義利の刀に
斃
(
たふ
)
れたり。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
蓋
(
けだ
)
しやむをえなかった訳だろう。しかしそれは僕の云う事だ。僕は誰と喧嘩したって構わない男だ。誰と喧嘩したって損をしっこない境遇に
沈淪
(
ちんりん
)
している人間だ。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
猶
(
なお
)
自己
(
おの
)
が不幸に
沈淪
(
ちんりん
)
している苦痛を味わいかえして居るが如きものもあった、又其の反対に
飽
(
あく
)
までも他を
嘲
(
あざけ
)
りさいなむような、氷ででも出来た利刃の如きものもあって
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
現に大いなる堕落に
沈淪
(
ちんりん
)
しているのであって、我々はかかる封建遺制のカラクリにみちた「健全なる道義」から転落し、裸となって真実の大地へ降り立たなければならない。
堕落論〔続堕落論〕
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
源氏の君を不運の中に
沈淪
(
ちんりん
)
させておいて、起用しないことは国家の損失であると
思召
(
おぼしめ
)
して、太后が御反対になったにもかかわらず赦免の
御沙汰
(
ごさた
)
が、源氏へ下ることになった。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
母親はそれを苦に病んで父の後を追ひ、その後を
襲
(
つ
)
ぐ者もなく、鎌井家は
沒落
(
ぼつらく
)
、お六は再び惡者に引戻され、美貌と器用さを重寶がられて、浮ぶ瀬もなく惡事に
沈淪
(
ちんりん
)
して居たのです。
銭形平次捕物控:082 お局お六
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
もしこれに反し、生滅界に執着する情禁じ難くして、我慢を募り妄念をほしいままにするときは、悪因悪果の規則によりて、漸々徐々、下界に
沈淪
(
ちんりん
)
し、結局、地獄に堕在すと申します。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
仕事によらずして行きあたりばったりに日々のパンを求むる者、悲惨と
微賤
(
びせん
)
のうちに
沈淪
(
ちんりん
)
してる名もなき者、腕をあらわにしてる者、
跣足
(
はだし
)
のままの者、それらが暴動にくみする人々である。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
錦を故郷に飾つた
例
(
ためし
)
はいくらも眼の前に
転
(
ころが
)
つて居るから、志を故郷に得ぬものや、
貧窶
(
ひんる
)
の
境
(
きやう
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
して
何
(
ど
)
うにも
彼
(
か
)
うにもならぬ者や、自暴自棄に陥つた者や、
乃至
(
ないし
)
は青雲の志の烈しいものなどは
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
という進まぬ鼻の表情……
仮令
(
たとえ
)
それが悲し気に痛々しくなってやがてホロリと
一雫
(
ひとしずく
)
しないまでも、ここを見損ねた親たちや仲人は、あったら娘を一生不幸の淵に
沈淪
(
ちんりん
)
させる事になるのであります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
他のすべての大都市においては、浮浪の少年は
沈淪
(
ちんりん
)
した人間である。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
沈
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
淪
漢検1級
部首:⽔
11画
“沈”で始まる語句
沈
沈黙
沈着
沈鬱
沈湎
沈澱
沈默
沈香
沈吟
沈丁花