水底みずそこ)” の例文
もうながあいだあななかに、または、ふか水底みずそこねむって、はるのくるのをっていたさかなたちは、ふいにあかるくなったので、びっくりしました。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
大「えゝ道具は麁末そまつでござるが、主人が心入れで、自ら隅田川の水底みずそこの水を汲上げ、砂漉すなごしにかけ、水をやわらかにしてい茶を入れましたそうで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とりわけ、きょうは陽ざしが熱く、湖のおもてはガラスのようにきらめいて、深い水底みずそこでときどきキラリと魚のひれが光った。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
おおい気競きおう処もあって——(いわしさばあじなどの幾千ともなく水底みずそこを網にひるがえるありさま、夕陽ゆうひに紫の波を飜して、銀の大坩炉おおるつぼに溶くるに異ならず。)
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両足をくくって水に漬られているようなもので、幾らわたしが手を働かして泳ぐ積りでも、段々と深みへ這入って、とうとう水底みずそこに引き込まれるんだわ。
刑事はうずくまったまま、はるか向うの辻をかしてみた。そこは水底みずそこに沈んだ廃都はいとのように、犬一匹走っていなかった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こうしてね、糸が水底みずそこへついた時分に、船縁ふなべりの所で人指しゆびで呼吸をはかるんです、食うとすぐ手に答える。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たちまちブクブクと水底みずそこしずんでしまいました。しばらくぎてからそのこと発見はっけんされて村中むらじゅう大騒おおさわぎとなりました。
彼方かなたに流され此方こなたへ漂いするうちに、いつか気も心もつかれ果て、遂にもろくもまぶたを閉じ水底みずそこ深く沈んで行った。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうしてその眼の光りで水底みずそこの鏡の表面おもてを照しますと、鏡の表面おもては見る見る緑色に曇って来まして、間もなくその中から美紅みべに姫の姿が朦朧ぼんやりと現われましたが
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
その階段を支えている四五本の褐色をしている、しめった木の柱は、澄んだ水底みずそこに立ててある。そこへ出て見ると向いの岸にごつごつした岩が鎖のように長く続いているのが見える。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
ことに水練に達して久しく水底みずそこに沈み、水の中を行くこと魚の如くであったと言われている。加うるに身体は不死身ふじみであって、一切の刀剣も刃が立たないということでありました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
少年は舟の上の仲間に、そう呶鳴って置いて、海豚いるかの様に身をくねらせて、水底みずそこ深くもぐって行った。舟遊びの人が落した財布などが、時として底の泥深く埋まっていることがあるからだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしは、人間にんげんをうらめしくおもいます。このふか水底みずそこにすんでいるわたしたちが、どんなわるいことを人間にんげんにたいしてしたでしょうか?」
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうして眼が覚めてのち赤い鸚鵡だの、宝蛇だの、水底みずそこの鏡だのを見ますと、いよいよあの夢は本当の事に違いないと思いまして、どんな事をしても構わないから
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
水底みずそこから水面すゐめんへ、なゝめ立懸たてかけたやうにつて、ふわ/\とうごいてえる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だからこの湖の縁に住む者のうち誰でも、水潜りの上手な者が水底みずそこの鏡を取って差し上げねばならぬ。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)