水主かこ)” の例文
火を放けられたのは前敷の水主かこどもの炊場かしぎばで、油でも撒いたのだとみえてどす黒い煙をたちあげながら、さかんに燃えている。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
律義なる水主かこ船頭を載せて羽州能代に下しけるに、思ふまゝなる仕合せを得、二年目に万事さしひいて六貫目の利を見たり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この藩の船に乗込んでいる者に船手というは、藩の扶持を貰っていて、常には藩地の三津みつの浜というに妻子と共に住まっている。その下に水主かこというものがある。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
水主かこ荷揚にあげが腕を揃えて帆をおろしにかかろうとする時に、飈弗ひょうふつとして一陣の風が吹いて来ました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
若い人は筑前ちくぜん出生うまれ、博多の孫一まごいちと云ふ水主かこでね、十九の年、……七年前、福岡藩の米を積んだ、千六百こく大船たいせんに、乗組のりくみ人数にんず、船頭とも二十人、宝暦ほうれきうまとし十月六日に
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
手當てあてとして江戸表へ名乘なのり出んとせし船中にて難風なんぷうに出合船頭せんどう水主かこ皆々みな/\海底かいてい木屑もくづとなりしが果報くわはうめでたき吉兵衞一人ひとりからふじてたすかり藤が原なる拙者のかくれ家へ來り右の次第を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは、伊達家の船蔵ふなぐらが松島湾の法師崎にあり、石巻街道の水主かこ町には、水主たちが住んでいるし、家中かちゅうの往来も少なくなかったから、それらのためにも、必要な設備がととのっていたのであった。
「それで、だいたいようすがわかった。……すこし話はちがうが、十一人の水主かこ船頭の中で、ついこのころ世帯を持ったばかりというような奴はいないか」
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
水主かこ楫取かじとりもその高波の下を潜って、こけつまろびつ、船の上をかけめぐっていたのが、この時分には、もう疲れきって、帆綱にとりついたり、荷の蔭に突伏つっぷしたりして
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わかひと筑前ちくぜん出生うまれ博多はかた孫一まごいち水主かこでね、十九のとし、……七ねんまへ福岡藩ふくをかはんこめんだ、千六百こく大船たいせんに、乘組のりくみ人數にんず船頭せんどうとも二十にん寶暦はうれきうまとしぐわつ六日むいか
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
享保十巳年みどしくれ明ればおなじき十一午年うまどしの元日天神丸てんじんまるには吉兵衞はじめ船頭杢右衞門もくゑもん水主かこ十八人水差みづさし一人都合つがふ二十一人にて元日の規式ぎしきを取行ひ三が日のあひだ酒宴しゆえんに日を暮しおのが樣々のげいつくしてきよう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
十一日の朝、まだ夜が明けないのに、マレー人の水主かこどもがあわただしく駆けまわっている。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
船頭はこう言って乗客の不安を抑えておいて、一方には水主かこの方へ向って
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つい挨拶あいさつをぞなしたり其夜吉兵衞には酒肴しゆかう取寄とりよ船頭せんどうはじめ水主かこ十八人を饗應もてな酒宴しゆえんもよほしける明れば極月ごくづき廿九日此日は早天より晴渡はれわたり其上追手おつての風なれば船頭杢右衞門は水主共かこども出帆しゆつぱん用意ようい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新九郎はスマトラ人の水主かこを呼びあつめると、前敷の大筒のところへ走って行って弾丸たま込めにかかったが、生憎と、弾丸が筒口つつぐちより大きくて、この急場には間にあわなかった。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
役人は、御船手、水主かこ同心森田三之丞もりたさんのじょう以下五人。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)