トップ
>
歔欷
>
すすりなき
ふりがな文庫
“
歔欷
(
すすりなき
)” の例文
すると、優しい
歔欷
(
すすりなき
)
の声が、聞えて来たではありませんか。そうして私の額の上へ熱い滴が落ちて来ました。彼女が泣いているのでした。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二人はかなり永い間沈黙を続けて居りましたが、閣下よ、最初に彼等の口から洩れた音と云うのが、何と、哀調綿々たる
歔欷
(
すすりなき
)
では有りませんか?
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
松代は、
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
なさそうに、嘉津子の頭を自分の胸へぐっと
抱
(
かか
)
えた。嘉津子は母親の胸の中で静かに
歔欷
(
すすりなき
)
を始めた。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
しかし
夫
(
をつと
)
を
殺
(
ころ
)
したわたしは、
盜人
(
ぬすびと
)
の
手
(
て
)
ごめに
遇
(
あ
)
つたわたしは、一
體
(
たい
)
どうすれば
好
(
よ
)
いのでせう? 一
體
(
たい
)
わたしは、——わたしは、——(
突然
(
とつぜん
)
烈
(
はげ
)
しき
歔欷
(
すすりなき
)
)
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
道太はやっと安心して、病室を出ることができたが、しかし次の部屋まで来ると、にわかに兄の
歔欷
(
すすりなき
)
が聞こえたので、彼は思わず足が
竦
(
すく
)
んでしまった。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
その風がしゅうしゅうとして
梁
(
はり
)
を渡り、或るところまで来てハタと止まると、いかにも悲しい
歔欷
(
すすりなき
)
の声が続く。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
男も一緒に、たしかに、
歔欷
(
すすりなき
)
の声をもらしていた。「あなただけでも、強く生きるのだぞ。」そう言った。誰か、はっきりしない。まさか、父ではなかろう。
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
男は
暗
(
やみ
)
の中にも、遂ぞ無い事なので
吃驚
(
びつくり
)
して、目を
円
(
まろ
)
くしてゐたが、やがてお定は
忍音
(
しのびね
)
に
歔欷
(
すすりなき
)
し始めた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
さも思い迫ったような
歔欷
(
すすりなき
)
をするのである。女は男の頭を自分の胸のところへ引き寄せて、髪の上を
撫
(
な
)
でて、額に
接吻
(
せっぷん
)
して
遣
(
や
)
った。それから涙を口で吸い取って遣ろうとした。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
涙の出ない
歔欷
(
すすりなき
)
のようなものが再び腹の底から起って仰向いている朝子の唇を震わせた。
おもかげ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「いいえ、お話は御免遊ばして……」とナヂェージダは、ラエーフスキイの
歔欷
(
すすりなき
)
に耳を澄ましながら答えた、「あたくし、気が
欝
(
ふさ
)
いでなりませんの。お
暇
(
いとま
)
させて頂きますわ……」
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
その間、法水は告白書に眼を通していたが、程なくイリヤは我に返って、
歔欷
(
すすりなき
)
を始めた。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
女の帯の結び目を見上げていた男の眼から、大粒な涙が
滴
(
したた
)
った。かすかな
歔欷
(
すすりなき
)
。
窓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
鮮純なリズムの
歔欷
(
すすりなき
)
はそこから
来
(
く
)
る。さうしてその葉その根の
尖
(
さき
)
まで光り出す。
月に吠える:02 月に吠える
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
鮮純なリズムの
歔欷
(
すすりなき
)
はそこから
来
(
く
)
る。さうしてその葉その根の
尖
(
さき
)
まで光り出す。
月に吠える:01 序
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
動哭
(
どうこく
)
と
嗚咽
(
おえつ
)
と
歔欷
(
すすりなき
)
の中へ、平次と八五郎は分けて入りました。町人にしては贅沢過ぎると思うほどの絹夜具の中に、横たわっているのは、河内屋の秘蔵孫、喜太郎少年の痛々しい姿です。
銭形平次捕物控:050 碁敵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
途端に並いる印度人一同の間から
歔欷
(
すすりなき
)
の声が
洩
(
も
)
れた。そしてその時誰かが
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
しかし、赤彦君は一言もそれに返辞をしない。呼ぶこゑは幾たびか続いて、それに
歔欷
(
すすりなき
)
のこゑが加はつた。僕は
夢現
(
ゆめうつつ
)
の間にそれを聞いてゐるのであるから、何か遠い世界の出来事のやうに思へる。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
顔に当てた
手巾
(
はんけち
)
の中から
歔欷
(
すすりなき
)
の声を洩らした。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
わたしの心は遠いところで
歔欷
(
すすりなき
)
をやめない
風は草木にささやいた:01 風は草木にささやいた
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
歔欷
(
すすりなき
)
に窪んだ枕に伏せて、而も彼女は
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
歔欷
(
すすりなき
)
して彼は
悶
(
もだ
)
えつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
しかし夫を殺したわたしは、
盗人
(
ぬすびと
)
の手ごめに遇ったわたしは、一体どうすれば
好
(
よ
)
いのでしょう? 一体わたしは、——わたしは、——(突然烈しき
歔欷
(
すすりなき
)
)
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
主人が入って来た時も面を上げてそれを迎えることをさえしないで、かえってその打伏した袖の下から
歔欷
(
すすりなき
)
の声が、ややもすれば高くなるのでありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
腰に
絡
(
まつわ
)
りついている婦人連の
歔欷
(
すすりなき
)
が、しめやかに聞えていた。二階一杯に
塞
(
ふさ
)
がった人々は息もつかずに、静まり返っていた。後の方には立っている人も多かった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
女は歩きながら、
歔欷
(
すすりなき
)
をしている。男は黙っている。丁度
市
(
し
)
の公園の前を通っている。暗い、静かな、広い町の上へ、公園の木立の中から、
接骨木
(
にわとこ
)
の花の
香
(
か
)
が、軽く悲しげに吹いて来る。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
突然子供がしゃくり上げて泣くような高い
歔欷
(
すすりなき
)
の声が四辺の静寂を破った。
牡丹
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
自分でもなぜあんな事になったのかわからなかった。で今こそマリヤ・コンスタンチーノヴナの前で、きっとあの借金は返しますと誓いたかったが、こみ上げて来る
歔欷
(
すすりなき
)
と羞恥とで口が利けなかった。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
私は直ぐ又
俯
(
うつむ
)
いて、下唇を噛締めたが、それでも
歔欷
(
すすりなき
)
が洩れる。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その
歔欷
(
すすりなき
)
でもつて私をあやし
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
わたしはこのまま生きていれば、大恩人の甚内を憎むようになるかも知れません。………(永い
間
(
あいだ
)
の
歔欷
(
すすりなき
)
)
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼女は今絶望のどん底にあるものらしかったが、客にサアビスする
隙々
(
ひまひま
)
に、詩作に
耽
(
ふけ
)
るのであった。毎日々々の生活が、やがて彼女の
歔欷
(
すすりなき
)
の詩であり、
酷
(
むご
)
い運命の行進曲であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お君は
歔欷
(
すすりなき
)
の声で再び主人を呼びました。そうしてこころもちあちらを向いて
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
笹村は多勢の
少
(
わか
)
い
甥
(
おい
)
や
姪
(
めい
)
と、一人の義兄とに見送られて、その土地を離れようとする間際に、同じ血と血の流れあった母親の心臓の弱い鼓動や、低い
歔欷
(
すすりなき
)
の声をはじめて聞くような気がした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
荒い
歔欷
(
すすりなき
)
が、いつまで経っても
遏
(
や
)
まなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
歔
漢検1級
部首:⽋
16画
欷
漢検1級
部首:⽋
11画
“歔欷”で始まる語句
歔欷流涕