検非違使けびいし)” の例文
旧字:檢非違使
ははあ、こやつも楮幣に不服なのか。ならばなぜ、折檻せっかんなどせず、表向きに、検非違使けびいしノ庁へつき出さんか。——この良忠から一さつ
検非違使けびいしには、やっとこれだけの事がわかった。そうして、阿濃は、罪の無いのが明らかになったので、さっそく自由の身にされた。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
隆房大納言たかふさだいなごんが、検非違使けびいし(警視庁と裁判所をかねたもの)の別当(長官)であった時の話である。白川のある家に、強盗ごうとうが入った。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
検非違使けびいしさえも、法令の禁ずる摺衣すりごろもを着けて、白昼の大道を踊り歩いた。蓬壺ほうこの客もまた一団となって繰り出した。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
これを聞いた、山門の幹部達が事の子細を、朝廷に直訴にやってくると聞いた関白は、再び、武士、検非違使けびいしに先手を打たせ、都に入らぬ先に、追い返してしまった。
却って検非違使けびいしとなって水戸に臨んだ、そこから本枝離反が生じた、しかしそれは表面の事実にすぎない、その裏にこそ真の理由がある、……時代の苦悶だ、昏迷こんめいとあがきだ
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
検非違使けびいしの吟味が厳しいので盗賊の噂も絶えた。火事も少なかった。嵐もなかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
追捕ついぶ検非違使けびいしは、宗府生久経、領送使は左衛門の府生武次であった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……今回の勲功いやちことあって、凄いようなご褒美いただいた上に、私設わたくしの女検非違使けびいし——のようなものにご任官だ! ……待ったり、任官はちとおかしい。官位を貰ったんじゃアないからなあ。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
即時、家人を八方へ派して、心当りを尋ねるやら、密々、検非違使けびいしの手まで借りて捜査したが、男女の行方は、ようとして分らない。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
考えれば、まだきのうのように思われるが、実はもう一年まえになった。——あの女が、盗みのとがで、検非違使けびいしの手から、右のひとやへ送られる。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この人は、広沢に住んでいたが、同時に仁和寺にんなじの別当をも兼ねていた。別当というのは、検非違使けびいしの長官をも云うのだが、神社仏寺の事務総長をも云うのである。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その飛報が、京の六波羅を驚かして、まだ、軍備も整わないうちに、第二報は、彼らの思いもしなかった木曾の検非違使けびいしから来て
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
検非違使けびいしたちがのあたりに、気を失って倒れたのを見てるのでございますから、御簾みすの内も御簾の外も、水を打ったように声を呑んで、僧俗ともに誰一人
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
正直で、利口な一郎次の事ですから、グングン出世しまして、十年経つか経たないうちに、検非違使けびいしという役になりました。そして名も左衛門尉清経さえもんのじょうきよつねと改めました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
検非違使けびいしの武者が、つじをかため、万一に備えている様子から見て、罪人は、家人けにんも持っている、しかるべき身分の者と、おもわれた。
あの物盗ものとりが仕返ししにでも来たものか、さもなければ、検非違使けびいし追手おってがかかりでもしたものか、——そう思うともう、おちおち、かゆすすっても居られませぬ。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
義仲以下の首を、六条の河原にけるため、検非違使けびいし等の役人は、まだ暗いうちから獄門の場所へ来て、指図をしていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度罪を犯したからは、正直に暮らすのも、あぶない世渡りをしてゆくのも、検非違使けびいしの目には、変わりがない。どうせ死ぬくらいなら、一日も長く生きていよう。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
思いつつ、彼は、刑部卿だの、検非違使けびいしだの、別当だの、大中小判事などの公卿が衣冠をつらねている前では、思いの半分も、陳述できなかった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なぜと申せ。」と、若殿様は言葉を御継ぎになって、「予を殺害せつがいした暁には、その方どもはことごとく検非違使けびいしの目にかかり次第、極刑ごっけいに行わるべき奴ばらじゃ。 ...
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
以後は、検非違使けびいしの手の者が、夜となく昼となく洛中を徘徊して、あだかも、六波羅の放免(密偵)組にたいする宮方の諜報陣のごとき観を呈した。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
可笑おかしいよりは何となく空恐しい気が先に立って、朝夕あさゆう叔母の尼の案内がてら、つれ立って奈良の寺々を見物して歩いて居ります間も、とんと検非違使けびいしの眼をぬすんで
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
検非違使けびいしの者から小松谷へ知らせがあり、仲時殿はじめ、私たちも、仰天したけれど、かいもくその当時は、母御ははごの藤夜叉さんの方は分らずじまいでした……。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを聞くと御門の中は、またざわめきたちましたが、さすがに検非違使けびいしたちばかりは、思いもかけない椿事ちんじに驚きながらも、役目は忘れなかったのでございましょう。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
惟方は検非違使けびいし別当べっとうです。そのほか一味の貴紳はみな若年で、縁類か、不平か、野望の友です。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれ検非違使けびいしの庁の役人などではない。今し方この門の下を通りかかった旅の者だ。だからお前になわをかけて、どうしようと云うような事はない。ただ、今時分この門の上で、何を
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だのに、母にぐれた不知哉丸は、その夕、検非違使けびいしから小松谷の仲時の邸にとどけられていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女の太政大臣だいじょうだいじん、女の検非違使けびいし、女の閻魔王えんまおう、女の三十番神、——そういうものが出来るとすれば、男は少し助かるでしょう。第一に女は男狩りのほかにも、仕栄しばえのある仕事が出来ますから。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
辻見張つじみはりは、即夜に行われ、検非違使けびいしの手もうごき、刑部付きの放免ほうめん(後の目明めあかしの類)も、洛外の山野、部落まで、ぎあるいているが、なんの手がかりも、もたらさない。
検非違使けびいしに問われたる木樵きこりの物語
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
検非違使けびいしノ別当だったので大理卿だいりきょうとも、ただ平大納言へいだいなごんともいわれている。年五十七、八。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義経の人間、義経の功労に対して、先に、検非違使けびいしへ補任との恩命があったが、義経は
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、検非違使けびいし包待制ほうたいせいのごときは、施薬院せやくいん医吏いりをはげまし、また、自分の俸給まで投げだして、必死な救済にあたっておりますが、いかんせん、疫痢えきり猖獗しょうけつにはかてません。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうのひるごろ、洛内洛外の境、羅生門らしょうもんの守りについていた検非違使けびいしの手の者と、佐藤義清の使いの男とが、喧嘩けんかして、義清の召使は、拉致らちされて行ったということを——たった今、耳にしたのだ。
正成のわすれがたみ楠木正行を、検非違使けびいしじょう帯刀たてわきに任官させて
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それなる酒屋のおやじ同様、検非違使けびいしの牢へぶち込んでくれる
彼が、検非違使けびいしの前職にあった頃とか。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あっ——検非違使けびいしだっ」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)