暗礁あんしょう)” の例文
風のない朝の大海原を、たくみに暗礁あんしょうのあいだをくぐりぬけ、うねりの山を、あがったりおりたりして、北をさして、こぎすすんだ。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
うみいろつめていた船長せんちょうが、突然とつぜん危険きけん警告けいこくはっしましたが、もうまにあわなかった。ふねは、ひどいおとをたて、暗礁あんしょう衝突しょうとつしたのです。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きみ、ボートは危険きけんだ、あれを見たまえ、しおはひいたが暗礁あんしょうだらけだ、あれにかかるとボートはこなみじんになってしまうぞ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もしあの先師が、この潮流の急な文久三年度に生きるとしたら、どう時代の暗礁あんしょうを乗り切って行かれるだろうかと思いやった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこには暗礁あんしょうがあり、そして岸に着いている私をおかへ上げなかった。私たちはお互いに岸の上と岩の上から呼び合った。叫び合った。八年の間。
勝家は、ぐだっとしたように、懐紙を出して、えりくびの汗を押し拭っていた。大きな暗礁あんしょうにのしあげたかたちである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
操縦がさっぱりきかなくなり、前進もできなくて、まるで宇宙の暗礁あんしょうへのりあげてしまったようなことになった。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
キッコのつくえはたびたびだれかにぶっつかられて暗礁あんしょうりあげた船のようにがたっとゆれました。そのたびにキッコの8の字はへん洋傘ようがさのようにかわったりしました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こんな愛にいつか、ゆるみが生じることがあると想像できるでしょうか? ところが想像できるできないの問題じゃなくて、実際二人の愛はたちまち暗礁あんしょうに乗りあげたのです。
華やかな罪過 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
海中にはんカイリほども突き出した岩鼻で、その沖合には悪性の暗礁あんしょうが多く、三陸沿海を南下してくる千島寒流が、この岬の北方数浬の地点で北上する暖流の一支脈と正面衝突をし
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
その沖の御前の西にはドド根と云う一大暗礁あんしょうがあって、その附近は古来数限りなく船舶をんでいる危険区域であった。私を案内してくれた事務員の一人は奇怪な話をしてくれた。
真紅な帆の帆前船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのうちにふと気がついて見ると、彼の下検したしらべをして来たところはもうたった四五行しごぎょうしかなかった。そこを一つ通り越せば、海上用語の暗礁あんしょうに満ちた、油断のならない荒海あらうみだった。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
平沙の浦には暗礁あんしょうが多いから、晴天の日でも、ああして波のうねりがある、漁師たちも恐れて近寄らないところだが、もし、あれが人間であるとすれば、洲崎沖あたりで船が沈み
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
船員たちは、自分の目の前に、手の届きそうなところに、大黒島の雪におおわれた、わしつめのような岩石に向き合っており、左手に一体に海を黒く、魔物の目のように染める暗礁あんしょうを見いだした。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
その海の彼方かなたなる理想の島を憧れ求めて船を乗り入れたが、そこには抵抗すべからざる潮流や、恐るべき暗礁あんしょうや、意地悪き浅瀬が隠されてあり、また思いもうけぬ風雨に会って帆は破れ、かじは損じ
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
大しけで、帆柱が折れて漂流したり、乗っていた船が衝突して、沈没したり、千島では、船が、暗礁あんしょうに乗りあげたりしました。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
どれほどの用心深さで私はおりおりの暗礁あんしょうを乗り越えようと努めて来たかしれない。この病弱な私が、ともかくも住居すまいを移そうと思い立つまでにこぎつけた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして数秒後、その目まいが去ったとき、私は再び元の三角暗礁あんしょう内の一室に戻っていたが、目の前には例の怪しい姿をしたX大使が、厳然げんぜんと立っているではないか。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
も帆もかじも、茫然と、水夫かこの手から忘れられているまに、船は、怖ろしい暗礁あんしょうからつき出されて、目印山めじるしやま水尾木みおつくしを沖へ離れ、果てなき黒い海潮かいちょうふなばたを叩かれていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じっさいそれは不幸中のさいわいであった、船は暗礁あんしょうの上にすわったので、外部には少しぐらいの損傷そんしょうがあったが、浸水しんすいするほどの損害そんがいはなかった、だが動かなくなった船をどうするか。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
チーフメーツは、暗礁あんしょうに乗り上げたよりももっともっと驚いた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
ミッドウェー島に行くのには、パール・エンド・ハーミーズ礁という、いくつかの、小島と暗礁あんしょうのむれの、南の方を航海しなければならない。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
尾張藩は、と見ると、これは一切の従来の行きがかりを捨て、勤王の士を重く用い、大義名分を明らかにすることによって、時代の暗礁あんしょうを乗り切ろうとしている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は、「三角暗礁あんしょうの日記」に、簡単に祖国への出発の次第を記して、この重宝な基地を、また立ち出でた。私たちは、また、狭くるしい魚雷型潜水艇の中に、横になった。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、そのいきさつを語り、またこの城の守将の一命を助けん、助け難し、とする両軍の面目問題が暗礁あんしょうとなって、ついに行き悩んでしまった実情をも、事こまかに話した末
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船ははたして暗礁あんしょうに乗り上げたのであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
船尾せんびの方はずっと島の近くの暗礁あんしょうの上にのって居り、船首の方はそれから百メートルほどはなれたところに、船首のほんの先っちょと、メイン・マストを波の上に出していた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この気さくな老人のみは、始終、にこにこしていて、明智一族の今ぶつかっている暗礁あんしょうも知らず、春の海をゆく船に老いの余生を託しきって、しかも安心しぬいているような姿なのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安からぬ暗礁あんしょうを感じないではないが、既に、運を天意にまかせたつづらと船とは、還らぬともづなをきって天神岸から離れてしまった以上、今さらどう気をもんだところでおよばぬことであった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或いはまた三角暗礁あんしょうに赴き、或いは魚雷型潜水艇をって東西の大洋を疾駆しっくし、そのあいだ、巧みに金星超人X大使を牽制けんせいし、X大使の注意を建設進行中わが日本要塞の方に向けしめざりし殊勲は
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこでこの会談は、暗礁あんしょうにのりあげた形となった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その大きな暗礁あんしょうというのは
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)