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晏如
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あんじょ
ふりがな文庫
“
晏如
(
あんじょ
)” の例文
まるで
捨身
(
すてみ
)
のかまえとしか見えない。もし位置を
更
(
か
)
えて、信玄がそれに拠るとしたら、信玄は決して
晏如
(
あんじょ
)
としていられない気がする。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何故なら以上論じ尽した理由によると、どうしても見ず知らずの他人の手に赤ン坊を渡して、母親が
晏如
(
あんじょ
)
としている筈がないからである。
愛の為めに
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
鮮
(
すくな
)
くも道学者流の偽善はない。まことに明朗快闊、すべからく男性たるものかくの如く
晏如
(
あんじょ
)
たるべしといいたいところである。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
ただ道也先生がこの一点の
温気
(
おんき
)
なき
陋室
(
ろうしつ
)
に、
晏如
(
あんじょ
)
として筆硯を
呵
(
か
)
するの勇気あるは、外部より見て争うべからざる事実である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あらゆる賞讃や注目から身を
退
(
ひ
)
いて、いつでもその貧しい友人の中に
晏如
(
あんじょ
)
として暮しているシューベルトだったのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
▼ もっと見る
若しかかる約束にある智的生活が生活の基調をなし、指導者とならなければならぬとしたら、人間は果して
晏如
(
あんじょ
)
としていることが出来るだろうか。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そしてまた、どこでこれ以上の親切な待遇を見出し得よう?……しかし彼の自尊心は、友の世話になってるという考えに
晏如
(
あんじょ
)
たることができなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
円らかな、てらいのない、
晏如
(
あんじょ
)
とした心持……。其は総ての芸術を通して持つべき気品なのであろう。
日記:06 一九二〇年(大正九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
わたくしは果してよくケーベル先生やハーン先生のように一生涯他郷に住み
晏如
(
あんじょ
)
としてその国の土になることができるであろうか。中途で帰りたくなりはしまいか。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
従容
(
しょうよう
)
として
逼
(
せま
)
らず、
晏如
(
あんじょ
)
として
惕
(
おそ
)
れず、偉なる
哉
(
かな
)
、偉なる哉。皇太孫
允炆
(
いんぶん
)
、宜しく大位に登るべし、と云えるは、一
言
(
げん
)
や鉄の鋳られたるが
如
(
ごと
)
し。衆論の糸の
紛
(
もつ
)
るゝを防ぐ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
会社の方を能く勤めるのは無論の話、細君が随分手ひどく当っても
晏如
(
あんじょ
)
として狂わない。
髪の毛
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
... 単純に考えて、
晏如
(
あんじょ
)
として居られないんです。そのくせ性格の半面は、とても単純でのん気千万のくせに。」すると
従妹
(
いとこ
)
が突然「それが好いわよ。」と妙なしめくくりをつけたので
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
如何なる神の前であれ、神の前に立ったとき何人が
晏如
(
あんじょ
)
たり得ようか。
青春論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
さればとて
印度
(
インド
)
民族はアングロサクソン民族では無い。それがこのまま
晏如
(
あんじょ
)
として
何時
(
いつ
)
までも英国の節度に服して行くのであろうか。民智は時を
趁
(
お
)
うて進歩し、自治的能力はそれに伴って発達する。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
然るに吾々が
晏如
(
あんじょ
)
として眠れる間に武器を持つことその事の故のみで、吾々多数の意志は無の
如
(
ごと
)
くに踏み付けられるならば、先ず公平なる暴力を出発点として、吾々の勝敗を決せしめるに
如
(
し
)
くはない。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
いまは劉皇叔の消息も知れぬが、一朝お行方の知れた時は、関羽は一日とて、曹操のもとに
晏如
(
あんじょ
)
と留まっておるものではござらん。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼に若し、その愛によって
衆生
(
しゅじょう
)
を摂取し尽したという意識がなかったなら、どうしてあの目前の生活の破壊にのみ囲まれて
晏如
(
あんじょ
)
たることが出来よう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
吟味与力で相当に敵も作っている笹野新三郎が、家族から縄付を出して
晏如
(
あんじょ
)
としていられる道理はありません。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頭を剃ったパッチばきの幇間の態度がいかにもその処を得たように見えはじめた。わたくしは旧習に
晏如
(
あんじょ
)
としている人たちに対する軽い
羨望
(
せんぼう
)
嫉妬
(
しっと
)
をさえ感じないわけには行かなかった。
草紅葉
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうして
晏如
(
あんじょ
)
としている。電車に取り巻かれながら、太平の空気を、通天に呼吸してはばからない。このなかに入る者は、現世を知らないから不幸で、
火宅
(
かたく
)
をのがれるから幸いである。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お父さんは相変らず
晏如
(
あんじょ
)
として
愚迂多羅兵衛
(
ぐうたらべえ
)
を極め込んでいる。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
内省の魔が忍びこんでくる時には
晏如
(
あんじょ
)
としてはゐられない。
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
孫権自身もまた、それに
晏如
(
あんじょ
)
としてはいなかった。叔父の
孫静
(
そんせい
)
に呉会を守らせて、鄱陽湖に近い
柴桑郡
(
さいそうぐん
)
(
江西省
(
こうせいしょう
)
・
九江西南
(
きゅうこうせいなん
)
)
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人一たび勢利の
巷
(
ちまた
)
に
奔馳
(
ほんち
)
するや、時運に激せられて旧習に
晏如
(
あんじょ
)
たる事
能
(
あた
)
はず。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
一杯やっても
晏如
(
あんじょ
)
として、決して愚痴を
零
(
こぼ
)
さないのみならず
小問題大問題
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
義昭
(
よしあき
)
でも
義景
(
よしかげ
)
でも、また今川義元のごときでさえも、位置や名門に
晏如
(
あんじょ
)
としていれば、たちまち時代の怒濤が
覆
(
くつがえ
)
して行った。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
事ごとにこういう
齟齬
(
そご
)
ばかり踏んだ甲軍は、もう後ろに迫っている徳川、織田の聯合軍に対して、一刻も
晏如
(
あんじょ
)
としてはいられない状態になっていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
曹操の心は、いよいよ
晏如
(
あんじょ
)
たり得ない。冬は長い。実に冬は長いのである。明けても暮れても大陸の空は灰色に閉じて白いものを
霏々
(
ひひ
)
と舞わせている。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんな大騒動の起因が、自分にあるものと考えては、宋江の性格として、もう
晏如
(
あんじょ
)
とこれを見てはいられない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
官界の堕落腐敗のなかに長く
晏如
(
あんじょ
)
としていられるあなたでもないことは知れきっていると思ったからだが……
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも貴公だけならよいが、老公の側近から家中の正義の士がことごとく全滅の憂目を見るに知れきっているものを——
晏如
(
あんじょ
)
として、見ているのは信義ではない
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大将たりとその大将の座に、
晏如
(
あんじょ
)
と
驕
(
おご
)
っているなどは、すこぶる危ないものであるぐらいなことは、左中将義貞ほどなものが、わきまえていないはずもなかった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
晏如
(
あんじょ
)
と、身を横にしていられないような衝動が、唐突に、意識を度外して、からだを起させたのである。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも一日も
晏如
(
あんじょ
)
たるは得ない
刻下
(
こっか
)
にあって、こういう老人をつかまえて
癇
(
かん
)
を
尖
(
とが
)
らせていたことの何たる愚ぞや——と自嘲を覚えるとともに、秀吉にたいする敵意は
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
逐日
(
ちくじつ
)
、織田遺業の勢力
圏
(
けん
)
に、秀吉なる名が、何とはなく、
澎湃
(
ほうはい
)
たる威勢をもって聞え出して来たことは、勝家として、到底、
晏如
(
あんじょ
)
としているに忍びない現象であるのだ。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
情死
(
しんじゅう
)
の片残りという不甲斐ない身を、一日も
晏如
(
あんじょ
)
としている恥かしさに耐えなくなった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
儒者の論に耳をとられて、今を
晏如
(
あんじょ
)
として過ごしていたら、悔いを百年にのこすでしょう
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
捨て、数正の心も決して、
晏如
(
あんじょ
)
ではない。……が、運命の是非なさであろう。ゆるされい
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
われらの大望はまだ中途でしょうが。だのに、はや公卿なみの優遇ぐらいで骨抜きにされ、勅とあれば理非なくありがたがる兄者なのでは情けない。直義は一同に代り、その
晏如
(
あんじょ
)
を
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
のみならず、越路の雪の長さを思うと、彼の胸には、千丈はおろか、万丈の恨みが
悶々
(
もんもん
)
とふり積った。かくて寸閑も女子供など相手に
晏如
(
あんじょ
)
としていられないものに
趁
(
お
)
われ出すのであった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
の一声と、あの快馬
一鞭
(
いちべん
)
は、勝てるという
晏如
(
あんじょ
)
な気持からは出るものではない。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一刻も
晏如
(
あんじょ
)
としてはいられない寂しさと
焦躁
(
しょうそう
)
にかられていた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貞盛として、これは
晏如
(
あんじょ
)
たり得ない。——やがて。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
晏如
(
あんじょ
)
としていた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
晏
漢検1級
部首:⽇
10画
如
常用漢字
中学
部首:⼥
6画
“晏”で始まる語句
晏子
晏然
晏起
晏川
晏平仲
晏
晏嬰
晏居
晏殊
晏逸