時世ときよ)” の例文
陸稻をかぼともはんねえもんだな、以前めえかたちがつていま時世ときよぢやさうだからこんで場所ばしよによつちや、百姓ひやくしやうにもたえしたころびがあるのよなあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あまつさえ、風に取られまいための留紐とめひもを、ぶらりとしなびた頬へ下げた工合ぐあいが、時世ときよなれば、道中、笠もせられず、と断念あきらめた風に見える。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武士の娘と云う事を聞いたが、時世ときよとて芸者の勤め、皆な斯様に成り果てた者も多かろうと存じて………手前てまえ妹と知らず
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
武士の娘が茶屋女に——とは思ったが、それも時世ときよ時節じせつでしかたがないとあきらめたお艶は、田原町の喜左衛門からこうして毎日三社前に通っているのである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いや顧雍こよう。それは気が小さいことばだぞ。むかし漢の高祖は項羽こううから封を受けたこともあったが、後には漢中の王になられたではないか。みな時世ときよ時節じせつと申すものだ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふさげない事になつてにもにもまぬかれぬ弊風へいふうといふのが時世ときよなりけりで今では極点きよくてんたつしたのだかみだけはいはつて奇麗きれいにする年紀としごろの娘がせつせと内職ないしよくの目も合はさぬ時は算筆さんぴつなり裁縫さいほうなり第一は起居たちゐなりに習熟しうじよくすべき時は五十仕上しあげた
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
舌は時世ときよをのゝしるも
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なれ時世ときよ先達せんだち
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
今の時世ときよに、またとない結縁けちえんじゃに因って、半日も早うのう、その難有ありがたい人のお姿拝もうと思うての、やらやっと重たい腰を引立ひったてて出て来たことよ。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
舌は時世ときよをのゝしるも
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
二人で根岸に隠れているうち時世ときよといい、活計を失って、仲之町の歌妓うたひめとなった、且つ勤め、且つ夫に情を立てて、根岸に通っている内に、蝶吉は出来たので。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同じ時世ときよに生れきて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
驛路えきろうますゞおと、しやんと道筋みちすぢながら、時世ときよといひ、大晦日おほみそか道中だうちうひつそりとして、兩側りやうがはひさしならぶる商賈しやうこいへまきそろへて根占ねじめにしたる、門松かどまつつらねて、としかみおくるといふ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
同じ時世ときよに生れきて
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)