ぞろ)” の例文
晩年大河内子爵のおともをして俗に柘植黙つげもくで通ってる千家せんけの茶人と、同気相求める三人の変物ぞろいで東海道を膝栗毛ひざくりげの気散じな旅をした。
宿屋のどてらを着込んだ矢萩の横に、これは三つぞろいで、子分然として控えているその男のほうが、俺には旧知の顔として迫った。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
正金銀行支店の諸君から日本料理の生稲いくいねへ招かれて一を語りふかした。小島烏水うすゐ永井荷風二君の旧知ぞろひで二君の噂がしきりに出た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そうして同氏がさらに附け加えていうには、何んでも今度の出品は、日本の美術を代表するような傑作ぞろいを出品したい。
この世の中の画家がことごとく一様に仲よしであり、お互に賞讃し合い遠慮し合い意気地いくじのない好人物ぞろいであったとしたらしかも安全と温雅を標語としたら
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
黒いラシャの古風こふうな三つぞろいの背広をきちんと身につけているのに対し、あとからあらわれた針目博士の方は、よごれたカーキー色の労働服をつけていた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『度し難いたわけぞろいじゃ。——その馬鹿にもふたいろある。馬鹿に見える馬鹿と、馬鹿に見えない馬鹿と』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今度の戦争が始ってみやがれ。ボリ放題にボッてやるから。ギャバジンのぞろいぐらいじゃア、めったなことで米の一升も売ってやらねえから覚えてやがれ。
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
よくもまあ永い間、若い才物者ぞろいの独身者の間に交って、惨めなばかをさらしていられたものだ……
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
石川県へ往って三年ばかりって大阪へまいった所、しっての通り芸子舞子の美人ぞろいだからたまらない、君から貰った三百円もちゃ/\ふうちゃさ、むを得ず立帰たちかえった所が
こんな化物ぞろいのはなしは日本にもあって、一休和尚讃州旅行の節、松林中に古寺あって僧三日と住せず、化物出ると聞き、自ら望んで往き宿る。夜五こうになれば変化へんげ出て踊り狂う。
一人は秋田の人で、文久ぶんきゅう二年大槻磐渓おおつきばんけい先生の重刻になる『雪華図説』が送られて来た。もう一人は九州の人で『北越雪譜』の七冊ぞろいの大変保存のよい本が幸運にも手に入ったわけである。
語呂の論理 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「こちらは何と言っても玉ぞろいで、皆さんお綺麗きれいでいらっしゃいますよ。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二頭とも馬車馬としてはなにの訓練もない素人の、加之おまけに気むづかしやぞろひと来てゐるので、ものの二ちやうも走つて、町の四つ角に来たと思ふと、一頭は右へ、一頭は左へ折れようとして喧嘩を始めた。
紳士の随伴つれと見える両人ふたりの婦人は、一人は今様おはつとかとなえる突兀とっこつたる大丸髷、今一人は落雪ぼっとりとした妙齢の束髪頭、いずれも水際みずぎわの立つ玉ぞろい、面相かおつきといい風姿ふうつきといい、どうも姉妹きょうだいらしく見える。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
女人藝術げいじゆつは、美人びじんぞろひである。
さりとは困った腰抜けぞろいだ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日常家庭生活においても二葉亭の家庭は実の親子夫婦の水不入みずいらずで、シカモ皆好人物ぞろいであったから面倒臭いイザコザが起るはずはなかったが
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
いやにりゅうとした三つぞろいを着こんだ、一見シロシ(紳士)風の、そのくせ言葉使いは下品な男だった。正直に言わないとただじゃおかないぞとすごむのである。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
一方は水のるような美男、一方は近所でも美人の評ある旧旗本のお嬢さん、まことに似合いの縹緻人ぞろいのことで、どっちにいやのあろうはずなく、相談はたちまち整ったのでありました。
坂府は知っての通り芸子げいこ舞子まいこは美人ぞろい、やさしくって待遇もてなしいから、君から貰った三百円の金はちゃ/\ふうちゃにつかはたして仕方なく、知らん所へ何時いつまで居るよりも東京へ帰ったら
「もととちがってこのごろは、みなさん、三つぞろいを召してらっしゃるのね」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)