)” の例文
小猿たちは、なんにおびやかされたのか、かれひとりを置きてにして、ワラワラとどこかへ姿すがたをかくしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔し自分を呼びてにした人から今となって鄭寧ていねい挨拶あいさつを受けるのは、彼に取って何の満足にもならなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御前おまへのやうなつまつたのはとてに御出おいあそばしました、なんといふこと御座ござりませう一ねん三百六十五にちものいふことく、稀々たま/\はれるは此樣このやうなさけないことばをかけられて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねつがあるとわるいから、一にちやすんだらと御米およね心配しんぱいてにして、れいとほ電車でんしやつた宗助そうすけは、かぜおとくるまおとなかくびちゞめて、たゞひとところ見詰みつめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
朝冷あさすゞはいつしかぎてかげのあつくなるに、正太しようたさんまたばんによ、わたしりようへもあそびにおでな、燈籠とうろうながして、おさかなひますよ、いけはしなほつたればこはこといとてに立出たちいで美登利みどり姿すがた
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すると何時の間にか島田の言葉遣が崩れて来た。しまいに彼は健三の姉を呼びてにし始めた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)