手荷物てにもつ)” の例文
桟橋さんばしると、がらんとした大桟橋だいさんばし上屋うはやしたに、三つ四つ卓子テーブルならべて、税関ぜいくわん役人やくにん蝋燭らふそくひかり手荷物てにもつ検査けんさをしてる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
手荷物てにもつにしてのみゆかしき妻戀坂下つまこひざかした同朋町どうぼうちやうといふところ親子おやこ三人みたり雨露あめつゆしのぐばかりのいへりてからひざをばれたりけり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かまびすしくおの家号やがう呼立よびたてる、なかにもはげしいのは、素早すばや手荷物てにもつ引手繰ひツたぐつて、へい有難ありがたさまで、をくらはす、頭痛持づゝうもちのぼるほどこられないのが
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夫人ふじんとも/″\せつすゝめるので、元來ぐわんらい無遠慮勝ぶゑんりよがちわたくしは、らば御意ぎよゐまゝにと、旅亭やどや手荷物てにもつ當家たうけ馬丁べつとうりに使つかはし、此處こゝから三人みたり打揃うちそろつて出發しゆつぱつすることになつた。
いとは月のいゝあの晩に約束した通り、翌々日よく/\じつに、れからは長く葭町よしちやうの人たるべく手荷物てにもつを取りに帰つて来たが、の時長吉ちやうきちはまるで別の人のやうにおいと姿すがたかはつてしまつたのに驚いた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此処こゝでさん/″\たせられて、彼此かれこれ三四十ぷん暗黒くらやみなかつたのちやうや桟橋さんばしそとることが出来できた。したのはかたばかりのちひさな手荷物てにもつで、おほきなトランクは明朝みやうてうりにいとのことだ。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)