手織ており)” の例文
着物は塾に居るときも故郷の母が夏冬なつふゆ手織ており木綿もめんの品をおくっれましたが、ソレを質に置くとえば何時か一度は請還うけかえさなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
老母ばあさんかまへてゞもたやうに小風呂敷こぶろしきつゝみいて手織ておりのやうにえる疎末そまつ反物たんものして手柄相てがらさうせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昔はいずれも手紡てつむぎ手織ておりの布で、農事の合間になされた仕事でした。今も一部はそのようにして織られていますが、大部分は仕事を家庭から工場に移しました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その着物は、半分はんぶんきんったビロードでできていて、もう半分は、灰色はいいろ手織ておりぬのでできていました。
田畑は勿論もちろん宅地たくちもとくに抵当ていとうに入り、一家中日傭ひやといに出たり、おかみ自身じしん手織ており木綿物もめんものを負って売りあるいたこともあったが、要するに石山新家の没落は眼の前に見えて来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何や清藏、あのお若を屋敷奉公させてうちへ帰らば、やあらけえ物も着られめえと思って、紬縞つむぎじま手織ておりがえらく出来ている、あんな物が家に残ってるとあとで見てきもれてくねえから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
瀬戸物せとものぼたんいた白木綿しろもめん襯衣しやつて、手織ておりこは布子ぬのこえりから財布さいふひもたやうななが丸打まるうちけた樣子やうすは、滅多めつた東京とうきやうなど機會きくわいのないとほやまくにのものとしかれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いま、ニールスが、エステルイエートランドを見おろしたとき、その手織ておりぬのを思いだしました。
そもそも自分のもとは田舎士族で、少年のとき如何いかなる生活して居たかとえば、麦飯をくら唐茄子とうなすの味噌汁をすすり、衣服は手織ており木綿のツンツルテンを着て、フラネルなんぞ目に見たこともない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
衣装なり常着ふだんぎだからくはございませんが、なれども村方でも大尽だいじんの娘と思うこしらえ、一人付添って来たのは肩の張ったおしりの大きな下婢おんなふとっちょうで赤ら顔、手織ており単衣ひとえ紫中形むらさきちゅうがた腹合はらあわせの帯
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
手紡てつむぎ手織ておりの木綿が近年さかんになったことをも書き添えねばなりません。美穂みほ村の向国安むこうぐにやすで織り、隣村でつむぐというかしこい道を取り、一時は盛な成績を見せました。染めも努めて草木から得ました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)