手後ておく)” の例文
面疔めんちょうは一刻を争うと申しますからね。愚図々々していて東京の病院で手後ておくれになる間に此方へ駆けつけることですよ。彼処あすこの敷居を
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
乳嘴突起炎は手術をすれば別に心配はないはずだけれども、手後ておくれになると往々脳を侵されるので、一命に関わる場合もあり得る。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いけません、手後ておくれになると大変ですから。それに、ほかの創と違って鼠に噛まれたのは、ことによれば生命いのちにかかわると申しますから」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さうしてまた食料しよくれうもとめるため勞力らうりよくくことによつて、作物さくもつ畦間うねまたがやすことも雜草ざつさうのぞくことも一さい手後ておくれにる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
モー少し早く僕が手紙を出しておくとまだよかったけれども手後ておくれになったため向うの方に先んぜられた。ここに手紙があるから読んでくれ給え。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「あんなになるまで、医者いしゃにかけないというほうはないのだが、もう手後ておくれであるかもしれない。」
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
手後ておくれになるとその国主から邪魔がはいらぬものでもないから、一左右次第御英断しかるべき旨。
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
「ねえ君、」と彼は言った、「君がどんなに説きたてても、反対のことをますます信じさせるばかりじゃないか。それにもう手後ておくれだよ。今時分あの女は遠くに行ってるだろう。」
実は僕等も見殺しには出来ないと言って、れ/″\運動したんだが、手後ておくれだった。元来喧嘩は両成敗りょうせいばいだから、こんなことになる筈はない。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それも手後ておくれであると云われたので今更あわて出し、第二の外科医を招いたのであるが、その外科医もさじを投げて帰ったのだと云うことであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
みなみいへではすこしばかり養蠶やうさんをしたので百姓ひやくしやう仕事しごとすべ手後ておくれにつたのであつた。村落むら大抵たいてい田植たうゑをはけたのであわてゝ大勢おほぜいやとうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
くはれるのが手後ておくれになつたむぎしろる。時々とき/″\つてくはいたつちあしそこきおろすおつぎの姿すがたがさや/\とかすかなひゞきてゝうごしろうへえる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
直したいという積極的の問題だったら手後ておくれになるぜ
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「到頭一人手後ておくれで死んだとか申しましたよ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)