御世みよ)” の例文
「いやいや治まれるこの御世みよにめったにそんな事のある訳はない。その証拠には町奉行和泉守様のご様子が酷く悠長を極わめておられる」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「御政治がわるいのさ。……いや、悪いにも、いいにも、今は、御政治なんかないんだから、群盗たちには、こんなありがたい御世みよはない」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君は元來英明にましませば、事今日あらんこと、かねてより悟らせ給ひ、神佛三寶に祈誓して御世みよを早うさせ給ひけるこそ、と有り難けれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ねぶりて居られたりと昔し足利家の御世みよ名奉行めいぶぎやうと世にたゝへたる青砥あをと左衞門尉藤綱も訴訟うつたへきく時は必らず目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なにしろ、人皇にんのう第六十代醍醐だいご天皇様の御世みよの出来事だから、人別にんべつのところに少しの狂いはあるかも知れないけれども、どっちにしても綺麗な女の方に間違いはない。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
本名を内海文三うつみぶんぞうと言ッて静岡県の者で、父親は旧幕府に仕えて俸禄ほうろくはんだ者で有ッたが、幕府倒れて王政いにしえかえ時津風ときつかぜなびかぬ民草たみぐさもない明治の御世みよに成ッてからは
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かようの次第で、御世みよごとに志摩しまの國から魚類の貢物みつぎものたてまつる時に猿女の君等にくだされるのです。
明治の御世みよも、西南戦争あたりまでの十年間というものは半蔵には実に混沌こんとんとして暗かった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
われわれは唯その御支配のもとおさま御世みよの楽しさを歌にも唄い絵にも写していつ暮れるとも知れぬ長き日を、われ人共に夢の如く送り過すのがせめてもの御奉公ではあるまいか。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
白樺や山毛欅ぶな唐松からまつの梢吹く凉しい風に松蘿さるをがせの搖ぐ下に立つことが出來るかと思ふと、昭和の御世みよが齎らしてゐる文明が今のわれ等を祝福してゐてくれると誰も感ぜずには居られまい。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
むかしぎょう御世みよに、娥皇がこう女英にょえいという二人の御娘がありました。堯がしゅんに世をゆずろうというとき、舜はこばんで受けません。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いろいろの名目を押し立てては、これまた絞り取るに余念のない、その徳川の幕府に対し、反抗の旗を翻えし、天朝様の御世みよに返そうとする! ……これが義党の方々の
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それと申すも全く以て治まる御世みよのおかげ、このような目出たい事は御座いますまい。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
御世みよ御世の天皇の御政おんまつりごとはやがて神の御政であった、そこにはおのずからな神の道があったと教えてある。神の道とは、道という言挙ことあげさえもさらになかった自然おのずからだ、とも教えてある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
六郎殿に御世みよを取られては三好に権を張り威を立てらるるばかりである、是非ないことであるから、政元公に生害しょうがいをすすめ、丹波の源九郎殿を以て管領家を相続させ、我〻が天下の権を取ろう
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ち淨覺院の門前に捨子と致し右老母も死去しきよ致したるなり淨覺院先住天道存命中の遺言ゆゐごんかくの如し依て常樂院初め我々御守護申上何卒なにとぞ御世みよに出し奉らんと渺々はる/″\御供おんとも申上候なりと辯舌水の流るゝ如く滔々たう/\と申述ければ松平伊豆守殿初め御役人方おやくにんがたいづれもことばは無くたゞ點頭うなづくばかりなりしが然ば御身分の儀は委敷くはしく相分りたり此上は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして市況は活溌になり、景気を増すほど、庶民も新政を謳歌して、王政万々歳の御世みよを現じだすにちがいない——
「泰平の御世みよだ、人など切れるか」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
累卵るいらんの危うさを見ているようです。ひとたびまたのへんでも生じましては、せっかくな御世みよ初めも」
明るい御世みよとは思わないけれど、歌人として自然を相手に生きている分には、これでも不足とは思っておらぬし、また、弟ののこした二人の幼子おさなごや若後家の将来ゆくすえなどを思えば
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「が、それはあえなく、御失政に御失政をかさね、武家は申すにおよばず、庶民もなべて、よろこばぬ御世みよづくりであったことは、事実において、おさとりあらせられたかと存じますが」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南朝の御世みよの頃、新田武蔵守むさしのかみ小手指こてさしヶ原の合戦から駈け渡って、足利あしかが方の矢かぜを浴びたのもこの辺りだし——近くは、天正の頃、太田道灌どうかんの一族だの、千葉氏の一党が、幾たびも興り
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乾物袋になっていた番附の切れっ端「御世みよ泰平鼓腹こふく御免、大江戸大食番附」
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが神々も遠つ御世みよには、甲冑かっちゅうを召されて聖業の途に立たせられ給うた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)