引上ひきあげ)” の例文
村人が、男を引上ひきあげに行った時、草の繁っている蔭に、手足を縮めて、丸くなって、溺れている男を見た。顔は青白く、短かい髭が顎に生えている。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
きゝ母子諸共おやこもろとも先番屋へ引上ひきあげ勘兵衞が後家の家主をよび段々だん/\掛合かけあひの上屆に及びしかば檢使けんし出張しゆつちやうにて勘兵衞後家ごけならびに太七が口書くちがき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ところが幸いな事に、台湾に行っていたお婆さんの息子が突然本店詰になって引上ひきあげて来る事になった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
うへはて引上ひきあげくも此方こなたをさしてたゝまつてるやうで、老爺ぢゞい差向さしむかつた中空なかぞらあつさがす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして心の内には自分が兼て排斥した枯寂こじやくくうを感じてゐた。昼八つどきに平八郎は引上ひきあげの太鼓を打たせた。それを聞いて寄り集まつたのはやう/\百五十人ばかりであつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
燈火ともしびもと書物しよもつらき、ひざいだきてせ、これは何時何時いつ/\むか何處どこくにに、甚樣じんさまのやうなつよひとありて、其時代そのときみかどそむきしぞくち、大功たいこうをなして此畫このゑ引上ひきあげところ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お前は、すぐロケット隊全部に引上ひきあげを命じなさい
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆるし下さい。そしてお傍へお引上ひきあげなさる9360
させさらばとて西濱の港より友綱ともつなとき順風じゆんぷう眞帆まほ十分に引上ひきあげ走らせけるにぞ矢をる如く早くも中國四國の内海ないかい打過うちすぎ晝夜の差別さべつなくはしり晦日みそかの夜のこくごろとは成れり船頭せんどう杢右衞門はやうや日和ひより
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)