常磐木ときはぎ)” の例文
君が御名みなさちの井の、ゐどのほとりの常磐木ときはぎや、落葉木らくえふぼく若葉わかばして、青葉あをばとなりて、落葉おちばして、としまた年と空宮くうきうに年はうつりぬ四十五しじふいつ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あたかも若草の緑が常磐木ときはぎのそれになるやうな、或る現実的な強さが、あきらかに其処にも現れつつあるのであつた。
枝葉の茂つた常磐木ときはぎをそこへ運んで來て、一切の穢汚きたないもの、あさましいものを拂ひきよめるために、青い布や白い布をその枝にかけて見る『淨化』の神もある。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
すべての草木さうもくさらあわてた。地味ぢみ常磐木ときはぎのぞいたほかみなつぎはる用意ようい出來できるまではすご姿すがたつてまでも凝然ぢつとしがみついてる。ふゆしもはせてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
母の膝下しつかにて過す精進日せじみびは、常にも増してたのしき時節なりき。四邊あたりの光景は今猶きのふのごとくなり。街の角、四辻などには金紙銀紙の星もて飾りたる常磐木ときはぎ草寮こやあり。
初め鉢植にてありしを地にくだしてより俄に繁茂し、二十年の今日既に来青らいせいかく檐辺えんぺんに達して秋暑の夕よく斜陽の窓を射るを遮るに至れり。常磐木ときはぎにてその葉は黐木もちに似たり。
来青花 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
……うすき、もみぢのなかを、きりひまを、次第しだいつきひかりつて、くもはるゝがごとく、眞蒼まつさをそらした常磐木ときはぎあをきがあれば、其處そこに、すつと浮立うきたつて、おともなくたまちらす。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
店や工場をおもにして建築した家が多いのですから、庭はあつて常磐木ときはぎの幾本かは大抵の大きい家にはあるとしても、底花の木や草花を養ふ日光が入りやうもありませんから
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)