巡礼じゅんれい)” の例文
旧字:巡禮
いまの巡礼じゅんれいは、やまえ、かわわたり、野原のはらぎ、村々むらむらをいって、自分じぶん故郷ふるさとくには、いつのころであろうとかんがえられたのです。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういって、いたいたしげに行者の足をみたのは、道づれになっている女の巡礼じゅんれい——坂東ばんどう三十三ヵしょふだなかにかけた女房にょうぼうである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのとき、一人の巡礼じゅんれいのおじいさんが、やっぱり食事のために、そこへやって来ました。私たちはだまってかるく礼をしました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
近くまで行くと、私の方を見て、巡礼じゅんれいの女が、いきなりかけだしてきて、私にすがりつき、赤ん坊にすがりつきました。
山の別荘の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
車掌は仕方なく、彼のあとについて、彼と共に、改札口の外に出、それから駅の中をぐるぐると廻り、そして、掲示板けいじばんという掲示板の前を巡礼じゅんれいさせられた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
聖地をした巡礼じゅんれいのように、皆ふしぎに東海岸に行きたがる。東海岸に行けば米も塩も魚も豊富にある。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
そのために、世界じゅうの海という海を渡って、神様をがんをかけるやら、お寺に巡礼じゅんれいをするやらで、いろいろに信心しんじんをささげてみましたが、みんな、それはむだでした。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
そしてめくらのジャンのほうは卜占者うらないしゃになり、ちんばのピエールのほうは巡礼じゅんれいになりました。
かたわ者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
むかし、諸国しょこくのおてら巡礼じゅんれいしてある六部ろくぶが、方々ほうぼうめぐりめぐって、美作国みまさかのくにへまいりました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
もしその上に少しばかり潤色じゅんしょくほどこし、適当に口碑や伝説を取りぜ、あの地方に特有な点景、鬼の子孫、大峰おおみね修験者しゅげんじゃ、熊野参りの巡礼じゅんれいなどを使い、王に配するに美しい女主人公
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
親子づれ巡礼じゅんれいが間違えて入ったというで、はれ大変な、乞食こじきを見たような者じゃというて、人命に代りはねえ、おっかけて助けべえと、巡査様おまわりさまが三人、村の者が十二人、一組になってこれから押登って
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると——そのようすを、ぎすましたようなまなざしで、ジーッと見つめていた巡礼じゅんれいのおときが、とつぜん、気でもくるったように
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巡礼じゅんれいは、からだのぐあいがわるく、それに、つかれていました。彼女かのじょは、さっそく、くすりあたえました。しばらくすると、巡礼じゅんれいは、元気げんき恢復かいふくしました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところがすぐ向うから二人の巡礼じゅんれいが細い声で歌を歌いながらやって参ります。ネネムはあわててバタバタバタバタもがきました。何とかして早くばけもの世界にもどろうとしたのです。
正夫が巡礼じゅんれいのあとをつけていったので、私は一人でぼんやり夢想むそうにふけりました。
山の別荘の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
まあまあ、そう気がみじこうては、自身のからだをやつれさすばかり、それではなが年月としつきに、わが子をさがそうという巡礼じゅんれいたびがつづきません。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むすめは、この巡礼じゅんれいが、とお諸国しょこくをもまわるのだとききましたから、もしや自分じぶん故郷ふるさとへもゆくことはないかといました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その柿と同じような赤い着物を、巡礼じゅんれいの赤ん坊がきていたのです。
山の別荘の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
巡礼じゅんれい老人ろうじんは私の顔を見ました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
巡礼じゅんれいか何かにけて、この山へまぎれこんできた他国者なんで、うまく久米一の気に入って、絵描座の細工人にましたが、根からの巡礼で、ああにわかに腕が上がる筈はねえ
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)