将門まさかど)” の例文
旧字:將門
将門まさかどが、一検非違使たらんとする希望を拒まれたことが、彼の後年の叛乱の遠因であると伝へられることに依つても分るが
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
この、関も昔の跡というのは、先祖平貞盛、俵藤太秀郷たわらとうたひでさと将門まさかど追討のために東国へ下ったことを思い出して詠んだものである。
神田の明神へは、あれはたいら将門まさかど公をまつったもので、将門公が謀叛人むほんにんなどと伝えられているのは、甚だしいまちがいだ。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将門まさかど目がね、万華鏡まんげきょうに当てると人物や道具などが、細長くなったり、平たくなったりする、プリズムのおもちゃだとか、そんなものばかりでした。
鏡地獄 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
将門まさかどが乱を起しても護摩ごまいて祈り伏せるつもりでいた位であるし、感情のいと蜘蛛くもの糸ほどに細くなっていたので、あらゆる妄信にへばりついて
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
将門まさかどの遺した姫ぎみ滝夜叉が、序幕のだんまりには、女賊お滝の、金銀い分けの、よてん姿、あらゆる幻怪美をつくした扮装で現れるわけであった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「さてこそさてこそ、この旗を所持なすからは、問うに及ばず、将門まさかどが忘れがたみ、滝夜叉姫であろうがな。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おれの云う事もやっぱり夢のごとしか。アハハハハ時に将門まさかど気燄きえんを吐いたのはどこいらだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
将門記しょうもんき』に、平貞盛たいらのさだもり源扶みなもとのたすく敗軍してその妻妾将門まさかどの兵に凌辱せられ、恥じて歌詠んだと出づ。
そして、今はまたこの像は未曾有みぞうの国難を見ているのだ。げん兵が九州を犯した国難も知っていれば、法華堂の執金剛神しつこんごうしんはちになって救いに出たという将門まさかどの乱も知っている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
例えば源氏の頭領源頼信みなもとのよりのぶの如き、また平新皇とまで云われた平将門たいらのまさかどの如きすらがそれで、頼信よりのぶは関白藤原道兼ふじわらのみちかねの家人となり、将門まさかどは太政大臣藤原忠平ふじわらのただひら家人けにんになっておりました。
魯鈍なる群衆の雑踏を見ては、私に一中隊の兵士があれば彼らを蹂躪じゅうりんすることができるなどと思った。私の目の前をナポレオンと董卓とうたく将門まさかどとの顔が通っては消えた。強者になりたい。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「何んしろ、大作って奴は、平の将門まさかどみたいに、七人も影武者があって——」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
忠文はそのかみ将門まさかど追討の命を受けて武蔵国へ馳せ下ったが、途中で道草を食っているうちに、といっても余儀ない事情によることだが、将門は討ちしずめられ、なんのこともなく京へ帰還した。
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
年長としかさの二人は、いい加減な顔つきだったが、丹三、鼬、仁太の三人は、将門まさかどが旗上げでもするような気持だった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将門まさかどの追討会が行なわれた後、純友すみとも追討のために、伊勢大神宮へくろがねのよろいかぶとをたずさえた勅使が下向した。
そも我こそは桓武くわんむ天皇の後胤こういんに鎮守府将軍良将よしまさが子、相馬の小次郎将門まさかどなれ、承平天慶のむかしのうらみ、利根の川水日夜に流れて滔〻たう/\汨〻ゐつ/\千古れども未だ一念のあとを洗はねば
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
将門まさかど退治の後、ある女房俵の底を叩いて米をければ、一尺ばかりの小蛇出で去りしより、米出でざりけり、これより始まりて、今俵の底を叩かぬいわれとなり、また秀郷の末孫
春水堂がかねて雪之丞にめて書き下した、「逢治世滝夜叉譚ときにあうたきやしゃばなし」で、将門まさかど息女むすめ滝夜叉たきやしゃが、亡父の怨念うらみを晴そうため、女賊となり、遊女となり、肝胆を砕いて、軍兵を集め、妖術を駆使して
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
天慶てんぎょうの昔——つくり話にちがいないが——たいら将門まさかどと藤原純友すみともというどっちも野放しの悍馬かんばみたいな野望家が
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝敵将門まさかどを亡ぼした俵藤太秀郷たわらとうたひでさと十代の後胤、下野国の住人足利太郎俊綱の子又太郎忠綱、生来十七歳のもの、かく無位無官の者が宮に弓を引き奉るは恐れ多いことなれど
相馬も将門まさかどにゆかりあり、秩父も将門にゆかりある地なるなど、いよいよくすし。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
追われてからは、木から落ちた猿だ。田舎は、おれに働きにくい。変現出没のきかない所だ。将門まさかど、ヘンな顔をするなよ。盗みに行くわけではなく、立派に物代ものしろ
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まったいらな両毛平野も、この辺まで来ると、渡良瀬川をさかいに、たいら将門まさかど以来の坂東ばんどうの人煙が日光山脈にって散在し、赤松の小丘陵の多い起伏の変化もおもしろい。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この夜の、帰国披露目を、さかいに、小次郎は、以後、将門まさかどと、名のることにした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
常陸路ひたちじの方から今、ひとりの旅人が歩いて来る。相馬そうま将門まさかどが、坂東ばんどうに暴勇をふるって、矢うなりをほしいままにした頃から、この辺りの道もやぶもそのままにあるように蕭々しょうしょうとしたものだった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかし天慶てんぎょうらんに、将門まさかどの猛威に抗し難くなった軍勢が、彼の叔父にあたる者の木像を輿に乗せて陣頭にかつぎ出し、叔父に矢を射るかと将門まさかど威嚇いかくして追いくずしたということは聞きましたが
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天慶てんぎょう年間の将門まさかどの乱。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)