奮発ふんぱつ)” の例文
旧字:奮發
「君が来たんで生徒も大いに喜んでいるから、奮発ふんぱつしてやってくれたまえ」と今度は釣にはまるで縁故えんこもない事を云い出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たとえば僕が朝起きて今日は天気もよいし、気分もいいから、一奮発ふんぱつして十里先へ遠足する、とこう心の内に十里づかを目的として出発する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ごらんの通りの居酒屋をはじめたンで、あっしらは、まアこうして熨斗のしのついた暖簾の一枚も奮発ふんぱつして景気をつけに来ているンでございます。
自分は仲間の誰よりも、体が大きく、力が強く、知恵もあるので、みんなから尊敬されている。そこで一つ奮発ふんぱつして、みんなよりも立派な住居すまい
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「ねえ賢、あんたも知っているように八円のと十二円のと二通りあったが、あんたには十二円のを奮発ふんぱつしてやったのだよ」
しかし、そんなことをこれ以上かれこれ詮議せんぎだてしたって詰まらないから、じゃあ奮発ふんぱつして一ルーブリ半ずつで買いましょう。それ以上は出せませんよ。
その性根で用意したまつりおどりに行く時の一張羅いっちょうらを二人はひっぱって来た。白いものも洗濯したてを奮発ふんぱつして来た。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
祝いとうなったのじゃ。お嫌いでなければつきあっていただきたい。きょうのべに絵の売上金のなかから小豆少量、奮発ふんぱつめされ! 奮発めされ! わっはっはっは
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けば聖書バイブルかてにする道徳家だうとくかが二十五銭の指環ゆびわ奮発ふんぱつしての「ヱンゲージメント」、綾羅りようら錦繍きんしゆう姫様ひいさま玄関番げんくわんばん筆助君ふですけくんにやいの/\をんだはての「ヱロープメント」
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
人夫等岩崖をおほいで唯まゆひそむるあるのみ、心は即ち帰途にくにあればなり、此に於て余等数人奮発ふんぱつ一番、先づ嶮崖けんがい攀登はんとうして其のぼるを得べき事をしめす、人夫等なほがへんぜず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
聴き手が聴き手だけにこちらが奮発ふんぱつできたので、皆も静かに耳を傾けた様子が見えて、自分の思いどおり自分も満足した、そしてお負けとして蚯蚓みみずの声をしてみせるつもりで
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「おやおや、えらいご奮発ふんぱつだね。でも、預る気になってくれて、わたしも奥さんに申訳が立つというわけさ、……どうれ、また気が変らないうちに、奥さんに知らしてあげようか。」
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「なにもいうことはない、祖先の名をはずかしめないように奮発ふんぱつするか」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
万碧楼では喰逃くいにげが帰って来たと云う顔をして、茶代も少し奮発ふんぱつしたに関せず、紫縮緬の夜具は雲がくれて、あまり新しくもない木綿の夜具に寝かされた。主の方では無論覚えて居る由もない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これは矢張やはりおじいさんのわれるとおり、このさいおおいに奮発ふんぱつして霊界れいかいとの交通こうつうさかんにする必要ひっようがございましょう。それさえできればんなことは造作ぞうさもなくわかることなのでございますから……。
この質問しつもんがすぐにわたしを奮発ふんぱつさして、一人で行く気を起こさせた。
あるさ、おれはおまえを見こんで、その大功たいこうをあらわす仕事をひきうけてきたんだ。おまえというものを、石見守いわみのかみさまにみとめさせようと思ってな。どうだ、どうだ蛾次、奮発ふんぱつして一つやってみるか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの車のあとを追っかけるのだ。賃銀は奮発ふんぱつするぜ」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
難船して死にやしないかなどと思っちゃ困るから、奮発ふんぱつして長いのを書いてやった。その文句はこうである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「君はもっと勉強しないと、やりそこなう(fail)から、大いに奮発ふんぱつせんといかんぞ」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「もっと宿料を奮発ふんぱつなされば、あっちにいくらもいいお座敷があいておりますよ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一見人工をくわへたる文珠菩薩に髣髴はうふつせり、かたはらに一大古松あり、うつとして此文珠いわへり、丘を攀登ばんとして岩下にちかづかんとするも嶮崖けんがい頗甚し、小西君および余の二人奮発ふんぱつ一番衆に先つてのぼ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
意気地いくじないような、おかしいような気がします 私共のような鳥でさえ、高い山の上を飛び廻ってるのですもの、あなたも一つ奮発ふんぱつして、国中で一番高い山の上に雷を落としてみられたら
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「よう、うなぎどんぶりじゃないか。えらく奮発ふんぱつしたね。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
五円の茶代を奮発ふんぱつしてすぐ移るのはちと残念だが、どうせ移る者なら、早く引きして落ち付く方が便利だから、そこのところはよろしく山嵐にたのむ事にした。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)