可怪おかし)” の例文
その様子がどうも可怪おかしいので、お前は誰だと声をかけると、その男はいきなりに刀を引き抜いて番頭を目がけて斬ってかかりました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうだな! 血糊がべっとりついていたというのは可怪おかしいな! こんな雨の中でも見えるほどに血が流れ出していたんでは
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「なにそン時こそちっとばかし可怪おかしな顔をしたッけが、半日もてば、また平気なものさ。なンと、本田さん、ずうずうしいじゃア有りませんか!」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
たとひ今は世に亡き人にもせよ、正に自分の恋人であればだけれども、可怪おかし枯野かれのの妖魔が振舞ふるまい、我とともに死なんといふもの、恐らく案山子かかしいだ古蓑ふるみの
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もっとも、自殺にしても、青酸を入れたコップとかビンとかが無いのは可怪おかしいとも言うことが出来ます。
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
雪江が、何とも可怪おかしな心地でその辺の様子を眺めてゐると、階下に人の足音が聞えた。
夜の奇蹟 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
成程使者つかいが丁度向に行った頃が十二時時分であったろうから、主筆も編輯長もまだ出社せぬというのは、そうであろう。が、「その金は渡すこと相成り難く候。」とあるのは可怪おかしい。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
しかもその声のうちには、僕をびっくりさせるような可怪おかしな響きがあった。
可怪おかしいなあ。して用件は?』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
継子さんは食卓ちゃぶだいの上にうつ伏してゐるので、初めはなにか考へてゐるのかと思つたのですが、どうも様子が可怪おかしいので、声をかけても返事がない。
「(そうです。)は可怪おかしい。近所に居ながら、知らんやつがあるか、判然はっきりえ、落籍ひいたのか!」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は酔客よりも寧ろ、そんな光景を平気で眺めてゐる親父を可怪おかしく思つた。
るい (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
確かに夕方離屋はなれに引取った切りですが、仕事があると言ってネ? 灯がいてますかいてる、死ねば一番先に貴方あなたが知るわけですね、可怪おかしいなア、しか悪戯いたずらにしちゃこの夜中に少し念入りだ。
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「なんだか様子が可怪おかしいぞ!」
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
少しく可怪おかしいとは思ったが、柔かいのはおそら粘土ねばつちであろうと想像して、彼はずここに両足を踏み固めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まだ可怪おかしかつたのは、一行いつかうが、それから過般いつかの、あの、城山しろやまのぼ取着とつつき石段いしだんかゝつたときで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「この頃はここらに可怪おかしなことが始まりましてね。労働者がみんな逃げ腰になって困るんですよ。」
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いや、これは可怪おかしいぞ。一人ひとりばかりないのなら、をんなうかしたのだらうが、みせばあさんもなくなつた、とすると……前方さきさらはれたのぢやなくつて、自分じぶんつままれたものらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おつや (小声に力をめて。)でも、あの人はどうも可怪おかしいわ。ァちゃんが無暗むやみにあの人を怖がるのは、なぜだろうと思っていたんだが、あたしも今、急に怖くなったわ。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ハテ可怪おかしな事をいうと思いながら、指さす方を見あげたが、私の眼には何物なんにも見えない。
安政四年の正月から三月にかけて可怪おかしなことを云い触らすものが出来たんです。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
気をつけて見れば見るほどどうも可怪おかしいようにも思われたので、私はいっそ本人にむかって打付うちつけただして、その疑問を解こうかとも思ったが、可哀かあいそうだからおしなさいと妻はいった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「まあ、黙って聞くがい。それには又種々いろいろ可怪おかしな話が絡んでいるのだ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
祖父おじいさんは少し酔っていたので、何か小唄をうたいながらぶらぶら来ると、路傍みちばたの樹の蔭から可怪おかしな者がちょこちょこ出て来た。猿のような、小児こどものような者で、はり真直まっすぐに立って歩いて行く。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしそれが可怪おかしいじゃアないか、の奥様は大層継子を可愛がったと云うのに、どうしてんな怖しい事をたくんだのだろう」相手は私の無経験をあざけるように冷笑あざわらって「サアそこが女の浅猿あさましさで、 ...
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「もう五、六年まえから可怪おかしいんですよ。」
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)