竹藪の蔭の井戸端に木蓮とコヾメ桜の老樹が枝を張り、野天風呂の火が、風呂番の娘の横顔を照してゐた。もう余程古いことであり、村の名前さへ稍朧ろ気であるが、私は不思議とその娘の名がるいといふのであつたと憶えてゐる。その時私は採集旅行の途中で大きな …
著者 | 牧野信一 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「Home line(ホーム・ライン) 第三巻第三号」玉置合名会社、1936(昭和11)年3月15日 |
文字種別 | 新字旧仮名 |
読書目安時間 | 約4分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約6分(300文字/分) |