召捕めしと)” の例文
「ながらくらえなかった武田伊那丸たけだいなまる、またふたりの者まで、一もう召捕めしとり得たのは、いつにかれのうったえと、そちの手柄てがらじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、……町奉行まちぶぎょう白洲しらすを立てて驚いた。召捕めしとつた屑屋を送るには、槍、鉄砲で列をなしたが、奉行役宅やくたく突放つっぱなすとひきがえるほどの働きもない男だ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鼠小僧次郎太夫は、今年五月の上旬に召捕めしとられて、八月の中旬に獄門になった、評判の高い大賊たいぞくである。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お玉は何の故にして自分が召捕めしとりに来られたのだかわからない。米友もまたもとよりそれがわからない。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、なかには何かかんちがいして、作爺さんがお召捕めしとりにでもなったようなことを言うやつもある。ねいりばなをこの騒ぎにたたき起こされて、寝ぼけているんです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けれども、今夜吉良邸へりこんだら、それこそ本当に十が十の死だ! 公儀の手に召捕めしとられて、お仕置場しおきばへ引きだされたら、どんなことがあってものがれようはない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
遂に芸者組合より苦情出で内々その筋へ歎願密告せしかば大正五年四月の頃より時の警視総監西久保某といへる人命令を部下の角袖かくそでに伝へてどしどし市中の白首を召捕めしとりけり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
女房のおみねが己に取り付く事の出来ない所から、此の女に取付とッついて己の悪事を喋らせて、おかみの耳に聞えさせ、おれを召捕めしとり、お仕置しおきにさせてうらみをはらす了簡に違いなし
「それはそうじゃが、今申した事を忘れぬように——到着致したなら、すぐ召捕めしとっての」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
切られ右の小指一本之なく候と云を聞かれ與市は何方いづかたの生れ又年は何歳位いくつぐらゐの男なるや彼の者共かんがへて歳は四十六もと大坂生れと承まはり候と申故夫にてよし早速さつそく勘兵衞を召捕めしとれと同心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さ、召捕めしとらねえのか」とあざけりながら、斬ると見せた太刀をさやに納め、針金のように、ピンと張った捕縄の端を一尋ひとひろ手繰たぐってグンと引いた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
築土つくど八幡の家からは喬之助妻園絵をはじめ、弟の琴二郎まで召捕めしとられてしらべを受けている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
働きし曲者くせものなれども終に運盡て是も大岡越前守殿に召捕めしとられ刑罰に行はれしとなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは江戸役人の頓智とんちで、死物狂いの囚人を残らず召捕めしとろうと致しますと、どんな騒動を仕出来しでかすかも知れませぬ故、一時其の場を治めるためにわざと文治一人いちにんを引立てたのでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
堪忍かんにんをやぶって、鉄杖と鉄腕てつわんのつづくかぎり、あばれまわるのであるから、ほッたて小屋どうような狩屋建かりやだては片っぱしからぶちこわされ、召捕めしとろうとする、新手あらても新手も
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて友之助と立花屋の主人あるじ召捕めしとって相生町あいおいちょうの名主方へ引立ひきたてゝまいりました。玄関にはかね待受まちうけて居りました小林藤十郎、左右に手先をはべらせ、友之助を駕籠から引出して敷台に打倒うちたお
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
合せしが不運にも取りにがせしによりその後なほ又手くばりして相尋あひたづね候折柄をりから此間千住に於て召捕めしとられ候段承まはり及び候然る上は若も吾助事死罪しざいにても仰付られ候へば是迄の辛苦しんくみづあわとなり本望ほんまう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「では、お奉行には、もしこの印籠の持ち主の居所がわかれば、召捕めしとるお考えですかの」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天網恢々てんもうかい/\にして洩らさず、其の内に再び召捕めしとられたら、いよ/\国中こくちゅうへ恥をさらさなければ成りますまい、只今お町殿へ明日あすのことを申上げ、お別れにたった一目お逢いなされてはと申入れましたが
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「法達召捕めしとった」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)