北狄ほくてき)” の例文
見よその先祖は赤手を揮うて四海を圧倒したるローマ人も、その子孫に至ればたちまち北狄ほくてき蛮人の鉄蹄てってい蹂躙じゅうりんせられたるにあらずや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
北は、北狄ほくてきとよぶ蒙古もうこに境し、東は、夷狄いてきと称する熱河の山東方面に隣するまで——旧袁紹治下の全土を完全に把握してしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「東夷南蛮北狄ほくてき西戎西夷八荒天地乾坤けんこんのその間にあるべき人の知らざらんや、三千余里も遠からぬ、物にじざる荒若衆……」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
現に古代には軽羅けいらをまとつた希臘ギリシヤ羅馬ロオマ等の暖国の民さへ、今では北狄ほくてきの考案した、寒気に堪へるのに都合の善い洋服と云ふものを用ひてゐる。
一触いっしょくしてタイタニックを沈めた氷山である。華麗かれいな羅馬の文明を鉄蹄てってい蹂躙じゅうりんした北狄ほくてき蛮人である。一切の作為さくい文明ぶんめいは、彼等の前に灰の如く消えて了う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
また北狄ほくてきが漢地を犯せし時、太守宋梟、涼州学術少なし、故にしばしば反す、急に『孝経』を多く写させ家々習読せしめば乱たちまち止みなん、と言えり。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
十七世紀の中葉に国家再興を企ててシナ本国から起こった明朝みんちょうは内紛のために悩まされ、次いで十八世紀、シナはふたたび北狄ほくてき満州人の支配するところとなった。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
支那もまたその通りで、自国以外を東夷とうい南蛮なんばん北狄ほくてき西戎せいじゅうといった。これは希臘ギリシャ人と同じである。
大戦乱後の国際平和 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
しかるに後年こうねん京城けいじやう諸士しよしにして、かの北狄ほくてき囘文くわいぶんけたるものすくなからず、ことあらはるゝにおよびて、官司やくにん密使みつし案討あんたうするに、無足むそく婦人ふじんすなはしかり、しか奸黨かんたう張本ちやうほんたりき。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕は仏蘭西人が北狄ほくてきの侵略に遭い国を挙げてマルンの水とウェルダンの山とを固守した時と同じ場合に立った。痩せ細った総身の智略を振絞って防備の陣を張らなくてはならない。
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
諸外国はことごとくこれを東夷とうい西戎せいじゅう南蛮なんばん北狄ほくてきなどと称し、天子はすなわち天命によりて、あまねく天下を統治すべきものとして、諸外国は当然中国に服属すべきものと認めていたのである。
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
堅城壺関こかんも、その夜ついに陥落し、高幹は命からがら北狄ほくてきの境をこえて、えびす左賢王さけんおうを頼って行ったが、途中家来の者に刺し殺されてしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は愛親覚羅あいしんかくら氏が絶漠ぜつばくより起り四百余州を席捲せっけんするの大機を洞観し、国防的経綸けいりんを画せり。彼は思えり、北狄ほくてき、支那を呑む、いて我くにに及ぶ、殷鑑いんかん蒙古にありと。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この『史記』の文を見ると、驢は支那よりもまず北狄ほくてき間にいと古く入ったので、かかる寒地によく繁殖したは、その時々野馬や野驢の諸種と混合して、土地相応の良種を生じたに依るだろう。
羅馬ローマの亡びたのは北方蛮族が亡ぼしたというが決して然らず、もう羅馬ローマは腐敗していた。そこで北狄ほくてきが侵入したまでである。物まず腐って虫これに生ず。これは亡ぼさるるに非ずして亡びるのである。
また安政三年三月時事に感じ、作りたる詩中にも「朝廷を推尊し幕府を重んぜば、大義赫々かくかくとして天下にあらわれん。しかる後神州た一新し、東夷とうい北狄ほくてき、赤県を仰がん」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
いや、暴れただけなら、何も戦闘力を失うほどでもなかったろうが、根が北狄ほくてきの夷兵であるから
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
羅馬ローマの亡びたのも蛮族が亡ぼしたというが、決してそうではない。もう羅馬ローマが腐敗した。そこで北狄ほくてきが侵入したまでである。物まず腐って虫これに生ず。これは亡ぼされるに非ずして亡びるのである。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
北狄ほくてき蛮人の継続者が鉄と電気とをもってほとんど地球上の表面を一新する近時の文明に至るまで、およそ人類の記憶に存する時代の歴史をもってこれと比較せんと欲するも
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
漂泊さすらうことも幾月か。彼の姿はほどなくここ代州たいしゅう雁門県がんもんけん(山西省北部)の街中に見出される。街はしゅう支里しりの城壁にめぐらされ、雁門山がんもんさんる雁門かんは、つねに、北狄ほくてきの侵略にそなえていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの北狄ほくてき蛮人が鉄剣快馬、ローマ帝国を蹂躙じゅうりんしついに封建割拠の勢いを馴致じゅんちし、君主・臣僕の制度をなして、欧州全土に波及せしめしより以来、第十九世紀の今日に至るまで、おおよそ四
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)