切先きつさき)” の例文
みん拔放ぬきはなしければ鍔元つばもとより切先きつさきまで生々なま/\しき血汐ちしほの付ゐるにぞコレヤおのれは大膽不敵なる奴かな是が何より證據なり何處どこで人を殺し夜盜よたう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されどもの香烟の酔ひ醒めの心地狂ほしさはなか/\に切先きつさきの冴え昔にまさる心地して、血に餓うるとは是をや云ふらむ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、とこなる一刀スラリと拔きて、青燈の光に差し付くれば、爛々たる氷の刃に水もしたゝらんず無反むそり切先きつさき、鍔をふくんで紫雲の如く立上たちのぼ燒刃やきばにほひ目もむるばかり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
今までニヤ/\してゐた千代松も、少し眉をひそめて、京子の容子を見詰めつゝ、竹丸をかばふやうにして、短刀の切先きつさきを避ける風にしながら、黄色くなつた疊の上に坐つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
手許てもとから切先きつさきまで澄み切つたかたはがねの光は見るものを寒くおびやかした。兄は眼をそばたてゝ、例へば死體にしろ、妻の肉に加ふべき刃を磨ぎすます彼れの心をにくむやうに見えた。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
坂の上から見ると、坂はまがつてゐる。かたな切先きつさきの様である。幅は無論狭い。右側の二階だてが左側の高い小屋こやの前を半分遮ぎつてゐる。其うしろには又高いのぼりが何本となく立ててある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左の脇腹に三寸余り切先きつさき這入はひつたので、所詮しよせん助からぬと見極みきはめて、平八郎が介錯かいしやくした。渡辺は色の白い、少し歯の出た、温順篤実な男で、年齢はわづかに四十を越したばかりであつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
主人あるじ居室ゐま迷出まよひいでて、そゞろに庭を徜徉さまよひしが、恐しき声を発して、おのれ! といひさま刀を抜き、竹藪に躍蒐をどりかゝりて、えいとぎたる竹の切口きりくちなゝめとがれる切先きつさきまろべる胸を貫きて
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
先刻も御自分で仰せられました通り、御幼少の時から武藝がお好きで、弓馬劒術柔術まで皆それぞれに免許のお腕前、現に今も叔父樣が不意討の切先きつさきを見ごと受止めたほどではござりませぬか。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
本は鋭く、切先きつさきは魂あり
おのれもにがさぬぞとげん八へ突掛つきかゝるに源八はおもひも寄ぬことなればおどろ周章あわてみぎの手をいだして刄物はもの挈取もぎとらんとせし處を切先きつさきふかく二のうで突貫つきとほされヤアと躊躇たちろく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
取出し拔て行燈あんどう火影ほかげきつと鍔元より切先きつさきかけて打返し見れども見れどもくもりなき流石さすが業物わざもの切味と見惚て莞爾と打笑うちわらさやに納めて懷中ふところへ忍ばせ父の寢顏ねがほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)