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其折
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そのをり
「おや
宗さん、
少時御目に
掛ゝらないうちに、
大變御老けなすつた
事」といふ
一句であつた。
御米は
其折始めて
叔父夫婦に
紹介された。
書生の
千葉いとゞしう
恐れ
入りて、これは
何うも、これはと
頭を
下げるばかり、
故郷に
有りし
時、
姉なる
人が
母に
代りて
可愛がりて
呉れたりし、
其折其頃の
有さまを
思ひ
起して
其折の
喜悦は
出て
行く
今の
悲痛の
千萬倍であらうぞよ。
彼女は三
度目の
胎兒を
失つた
時、
夫から
其折の
模樣を
聞いて、
如何にも
自分が
殘酷な
母であるかの
如く
感じた。
鞠なげ、
繩とびの
遊びに
興をそへて
長き
日の
暮るゝを
忘れし、
其折の
事とや、
信如いかにしたるか
平常の
沈着に
似ず、
池のほとりの
松が
根につまづきて
赤土道に
手をつきたれば