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俯伏
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うつぶし
ふりがな文庫
“
俯伏
(
うつぶし
)” の例文
今までは神経痛のために仰臥することが出来ずに、おほむね
炬燵
(
こたつ
)
に
俯伏
(
うつぶし
)
になつてゐたのが、昨夜以来は全く仰臥の位置の
儘
(
まま
)
だといふことである。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
言いさま
整然
(
ちゃん
)
として坐り直る、怒気満面に
溢
(
あふ
)
れて男性の意気
熾
(
さかん
)
に、また仰ぎ見ることが出来なかったのであろう、お雪は袖で顔を
蔽
(
おお
)
うて
俯伏
(
うつぶし
)
になった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
午餐
(
ひる
)
に
家
(
うち
)
の
者
(
もの
)
は
田
(
た
)
から
戻
(
もど
)
つて
其
(
そ
)
の
飯
(
めし
)
を
喰
(
た
)
べた。ちつとはどうだとお
袋
(
ふくろ
)
に
勸
(
すゝ
)
められても
勘次
(
かんじ
)
は
唯
(
たゞ
)
俯伏
(
うつぶし
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ぞつとして彼は
俯伏
(
うつぶし
)
になつた。そして蒲団を頭から被つた。動悸が激しくし出して、冷い汗さへ肌ににじんだ。彼は死の怖しさよりも今夜の今が怖しくなつた。
逆徒
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
フロルスは寝台の上に、
項
(
うなじ
)
を反らせて、真つ黒になつた顔をして動かずにゐる。ルカスは今離れたばかりと見える寝台に、又駆け寄つて、無言で
俯伏
(
うつぶし
)
になつた。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
▼ もっと見る
貴婦人は曲馬団の女のつける様な、ギラギラと
鱗
(
うろこ
)
みたいに光る衣裳をつけ、
俯伏
(
うつぶし
)
の品川四郎の背中へ馬乗りになっていた。馬は勿論着物を、…………………………。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
処
(
ところ
)
へ永禪は逃げられては溜らぬと思いましたから、土間へ
駈下
(
かけお
)
りて、
後
(
うしろ
)
から一刀婆に浴せかけ、横倒れになる処を
踏掛
(
ふみかゝ
)
ってとゞめを刺したが、お梅は畳の上へ
俯伏
(
うつぶし
)
になって
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
女湯の白いタイル張りの床の上に、年の若い婦人の
屍骸
(
しがい
)
が
俯伏
(
うつぶし
)
に倒れていたのだ。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
先生は
俯伏
(
うつぶし
)
の
顔
(
かほ
)
を
際
(
きは
)
どく畳から
上
(
あ
)
げて、三四郎を見たが、にやりと
笑
(
わら
)
ひながら
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし前の方が牽きすぎて、山の上から顔に白い毛のある一つ振り落され、その時早く水面にも落ちず、海辺に
俯伏
(
うつぶし
)
になって、自分の
脣
(
くちびる
)
を打った。女媧は可哀想に思ったがそのままにしといた。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
引出
(
ひきいだ
)
し調べられしに
瀬川
(
せがは
)
が申立し人相并に
疵所等迄
(
きずしよとうまで
)
相違なき故大岡
殿
(
どの
)
曲者に
對
(
むか
)
はれ其方ども
上野
(
うへの
)
中堂の
縁
(
えん
)
の下に
隱住
(
かくれすむ
)
事何故なるや
有體
(
ありてい
)
に申立よと有に兩人共一言の
返答
(
へんたふ
)
も出來
難
(
がた
)
き有樣にて
俯伏
(
うつぶし
)
居
(
ゐ
)
るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と
擦
(
こす
)
っては消し擦っては消し、ようよう
点
(
つ
)
けたる提灯の
燈明
(
あかり
)
に
照
(
てら
)
せば、
煉瓦
(
れんが
)
の塀と土蔵の壁との間なる細き小路に、
窶
(
やつ
)
れたる婦人
俯伏
(
うつぶし
)
になりて
脾腹
(
ひばら
)
を
押
(
おさ
)
え
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何とののしられても、哀れな鶴子は、
俯伏
(
うつぶし
)
たまま石の様に動かなかった。余りの打撃に思考力を失い、あらゆる神経が麻痺して、身動きをする力もないかと見えた。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
同時に内に入らんとせし、謙三郎は敷居につまずき、土間に両手をつきざまに
俯伏
(
うつぶし
)
になりて起きも上らず。お通はあたかも狂気のごとく、謙三郎に
取縋
(
とりすが
)
りて
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その胴体が
俯伏
(
うつぶし
)
になって、観念したものの様に、じっと動かないでいた。
艶々
(
つやつや
)
として恰好のいい身体だ。秋の初めではあるが、こう丸裸にされては
耐
(
たま
)
らないだろうと、痛々しかった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
八蔵ぬっと
顔
(
つら
)
差出し、
拳
(
こぶし
)
に婦人を
掴
(
つか
)
む真似して、「汝、これだぞ、と
睨
(
ね
)
めつくれば、連理引きに引かれたらむように、婦人は跳ね起きて
打戦
(
うちおのの
)
き、
諸袖
(
もろそで
)
に顔を隠し、
俯伏
(
うつぶし
)
になりて、「あれえ。」
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“俯伏”の意味
《名詞》
頭を下げ、うつ向くこと。
笏を手に持ち、腰を折って深く礼をすること。
(出典:Wiktionary)
俯
漢検1級
部首:⼈
10画
伏
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
“俯”で始まる語句
俯向
俯
俯瞰
俯目
俯仰
俯居
俯視
俯臥
俯仰天地
俯向形